宝塚記念

ムーン日本最強
GI馬7頭世紀の決戦ツキ抜けた

2007/06/24・阪神競馬場

▼ 48回宝塚記念
1着 
アドマイヤムーン
岩田
2.12.4
2着
メイショウサムソン
石橋
1/2
3着
ポップロック
武 豊
   
最強の称号をつかんだのは、3番人気のアドマイヤムーンだった。宝塚記念史上、最多タイのGIホース7頭が出走していた頂上決戦。アドマイヤムーンは最後の直線でファン投票1位選出のメイショウサムソンと一騎打ち。真っ向勝負の追い比べで半馬身差抜け出し、国内初戴冠を果たした。GI勝利はドバイ・デューティフリー以来2勝目。騎乗した岩田は、JRA移籍後のJRAGI初勝利を決めた。なお、1番人気の3歳牝馬ウオッカは8着に敗れた。

 

鞍上の岩田は会心のNo.1ポーズ

 

 

 

宝塚記念を制したアドマイヤムーンと岩田

【岩田カンゲキ移籍後初頂点】

▼秋盾→香港Cへ

激しく叩きつける雨のなか、世界の豪脚が輝きを放った。国内最強の座をかけた直線のデッドヒート。残り二百メートルからは、アドマイヤムーンとメイショウサムソンの一騎打ち。ムチに応えるサムソンと、鞍上に何度も何度も手綱を押されるムーン。ゴール前の坂で展開されたせめぎ合いは、半馬身抜け出したアドマイヤムーンが制した。国内初GI制覇のゴールを駆け抜け、岩田がガッツポーズ。No.1を意味する人さし指が上がった。

「追い出してからの反応が良かった。ムーン自体もいい瞬発力。並んで負けないぐらいの脚があった」と鞍上はパートナーを絶賛する。今回からのコンビ。それでもレースは理想的に進めることができた。ゲートを出ると、先行馬のペースが速いと読んで下げた。後方で折り合った。読みどおりにレースは前半千メートルを57秒5のハイペースで通過。冷静な立ち回りから進出し、決戦を制した。

3月31日に国際GIのドバイ・デューティフリーを制覇。次走のQエリザベスII世C(香港)では3着に敗れたが、古馬になってからの成長力は相当なものだった。「海外へ行って本当にたくましくなった」と松田博師は目を細める。3歳時は1番人気で臨んだ皐月賞が4着、ダービーも7着と苦杯をなめ続けた。秋には天皇賞に挑戦したが3着。「なかなか獲れなくて、もう無理かなと思ったこともある」。トレーナーもあきらめかけたほどだったが、国内最強メンバーを打ち負かして頂点に立った。

岩田にとっては、04年の菊花賞(デルタブルース)以来、2つ目のJRAGI勝利。昨年3月、園田から移籍してからは初めての美酒だ。「芝の上で表彰式ができてうれしい。園田の近くの阪神競馬場で勝てた」。今年のリーディング争いでトップを独走する名手は感激に浸った。

チャンピオンとなったムーンは、これからも勝利を欲して突き進む。「状態を見てからだけど、次の目標は天皇賞になると思う。年末の香港にも行く」と指揮官は、天皇賞・秋(10月28日・東京)から香港C(12月9日・シャティン競馬場)へ向かうローテを示唆。最強の座をつかんだムーンが、国内外の競馬界を席巻する。

 

【近藤オーナー、「ドバイよりうれしい」】

泥も気にせず、岩田騎手(左)を抱き寄せる近藤オーナー

待望の国内GI初制覇にアドマイヤムーンの近藤利一オーナー(64)も大喜び。「ドバイで勝ったことがフロックでなかった。名誉が保たれたということでは、ドバイのときよりうれしい」と言葉が弾んだ。ゴール前では、お守りを握りしめながら叫び続けた。「声がかれてしまった」と照れ笑い。今後は「ゆっくりと休ませてから秋の天皇賞へ。取ったら年度代表馬だろう。香港にも行く。勝つまで行くよ」とプランを明かした。

【サムソンと直線一騎打ち劇勝!!国内初戴冠】

▼サムソン雨に泣く。凱旋門賞で無念晴らす

勝利の女神は、メイショウサムソンにほほ笑まなかった。最後の直線でアドマイヤムーンとの激しい追い比べ。いつもの勝ちパターンに持ち込んだが、ゴール前で半馬身かわされ、惜しくも2着に敗れた。石橋守は「前を射程圏に置いて、後ろとの間合いを計っていた。結果的に仕掛けが早かったかもしれないが、仕方がない。もう少し馬場が乾いていたら…。勝った馬が強かった」と悔しさを胸の内にしまい込みながら、勝者を称えた。
 古馬の王者として追われる立場。道中は終始、すぐ後ろにアドマイヤムーンの姿があった。高橋成師は「見事にガッチリとマークされた。完敗とは思っていない」と悔しさをにじませた。勝負づけは済んでいない。「顔を合わせることもあるだろうから」とライバルへのリベンジを誓った。

注目の仏GI凱旋門賞(10月7日・ロンシャン)参戦については、今回の結果次第だった。松本好雄オーナーは「行く方向で」と前向きなコメント。高橋成師も「1週間ほど馬の様子を見てからになるが、内容そのものはまずくなかった。(挑戦を)考えていく方向で」と話した。春のグランプリの悔しさは、世界の大舞台で晴らす。

古馬の壁にはね返されたウオッカ

【ウオッカ古馬の壁失速8着】

凱旋門賞へ課題 古馬の厚い壁に阻まれ、ウオッカは8着に敗れた。ダービー優勝時の躍動感あふれるフォームは影を潜め、坂の手前で完全に失速。国内制圧の夢は破れた。

引き揚げてきた四位は「今日は折り合いを欠いたことが一番の敗因。あとは馬場。馬は落ち着きがあっていい状態だと思った」とサバサバとした表情。そして「みんなに支持してもらったのに…申し訳ありませんでした」と話した。

角居師も同じ見解。「怒って走っていた分(脚が)たまってなかった。下が緩い影響もあった」。だが、今後に向けて得たものも大きい。「古馬との力差を感じましたね。あと、もう少し力の要る馬場に対応する力をつけないと。ヨーロッパはこういう馬場ですから」と前を向いた。

今後については「まだオーナーと話ができていないので」と明言は避けたが「あと2カ月、リフレッシュする期間はある。どこかでこれ(古馬との対戦)を経験しておかないと。全部準備はします」。凱旋門賞挑戦は、しっかりと見据えている。

【豪州遠征へ弾み】

3着ポップロック 何とか3着は奪取した。僚馬ウオッカの陰に隠れたのか、武豊騎乗ながら4番人気だったポップロック。後方待機から直線でジワジワと追い上げ、粘るアドマイヤフジをかわしたところがゴールだった。「状態が良かったから狙ってたんだけどね。でも上位2頭は強かった。今日の馬場もパンパンの良よりは向いたかもね」と武豊。GI奪取はならなかったが、昨年同様、遠征を予定する豪州で、一層の飛躍を目指す。

【16キロ減響いた】

12着ダイワメジャー 戦いの前に、燃え尽きていた。5つ目のGI奪取を狙ったダイワメジャーは、見せ場なく12着大敗。「返し馬の段階から違った。いつもは自分から走っていく馬が、すぐに止まろうとしていた。レースでもハミに頼ってばかり。今日は参考外」と安藤勝。16キロ減の過去最低体重が響いた。「距離、馬場ではなく、輸送後にカイバを食べなかったことが敗因。神経質で初めての馬房を気にしたようだ」と上原師も肩を落とした。

 

 

アドマイヤムーン…牡4歳。父エンドスウィープ、母マイケイティーズ(母の父サンデーサイレンス)。馬主・近藤利一氏。生産者・早来 ノーザンファーム。戦歴・15戦9勝。重賞・札幌2歳S、共同通信杯、弥生賞、札幌記念、京都記念、ドバイデューティフリーに続き7勝目。総収得賞金933、947、000円。松田博資調教師、岩田康誠騎手ともに同レース初勝利。

Copyright(C) 2011 デイリースポーツ/神戸新聞社 All Rights Reserved.
ホームページに掲載の記事、写真などの無断転載、加工しての使用などは一切禁止します。ご注意下さい。
当サイトは「Microsoft Internet Explorer 4.x」「Netscape Navigator/Communicator 6.x」以上を推奨しています
Email : dsmaster@daily.co.jp