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天皇賞(春)
2冠馬サムソン貫禄V
持ち前の勝負根性で激戦制す

2007/04/29・京都馬場

▼ 第135回天皇賞(春)
1着 
メイショウサムソン
石橋
3.14.1
2着
エリモエクスパイア
福永
3着
トウカイトリック
池添
   
 やはり格が一枚上だった。昨年の2冠馬メイショウサムソンが持ち前の勝負根性を発揮。エリモエクスパイアの猛追を鼻差しのいで頂点に立った。高橋成師はうれしいGI初勝利。今後は宝塚記念(6月24日・阪神)へ進む予定だ。昨年はディープインパクトのおかげで、平穏に終わった“荒れる天皇賞”は、やはり波乱を演出。3連単は30万6390円の決着となった。

接戦を制したメイショウサムソン(中央)

 

 【ハナ差しのいだ】

2冠馬の看板はダテではなかった。古馬として迎えた伝統の一戦。メイショウサムソンは貫録を示した。猛追するエリモエクスパイアに、ゴール前で1度はかわされたが、再び差し返して、わずか鼻差でのタイトル奪取。接戦に強いサムソンらしい勝ち方だった。

どうしても勝ちたかった。菊花賞の敗戦でささやかれた距離への不安は、石橋守の耳にも入ってきた。「悔しかった。ボクはそんなことはないと思っていたし、馬を信じていた」。普段は感情を表に出さないが、この時ばかりは少しだけ語気を強めた。

もちろん、人馬の信頼感は揺らぐことはなかった。道中は折り合いに専念。位置取りは思ったより後ろになったが、慌てることはなかった。2度目の坂の下りで外からかぶされたが、ベテランは冷静に仕掛けるタイミングを待っていた。直線半ばで抜け出すと、あとは懸命に追うだけだった。周囲の雑音を見事に封じ込んだ勝利。石橋守は何度も「ありがとう」とパートナーに感謝した。


4コーナーで先頭に立ち、天皇賞を制したメイショウサムソン(右から2頭目)

 

【後任・高橋成師GI初制覇「年度代表馬目指す」】

高橋成師は安どの表情を浮かべた。「どこまでいってもやれやれだよ」。重圧はあった。定年で2月に解散した瀬戸口きゅう舎から、転きゅうして2カ月。30年来の付き合いがある松本オーナーから話を聞いたときは、思わず返答に困ってしまった。「断ることはないが、どう返事しようかなと。心の準備が必要だった」。与えられた使命を果たすことに全力投球するだけだった。ハードな調教を課して、鍛えに鍛え抜いた。

騎手時代に2勝を挙げた春の盾は、調教師として開業30年目で初めてのGIタイトルを制する舞台となった。「調教師の立場としては、喜びよりも次のことを心配してしまう。乗って勝ったときの方が気分爽快(そうかい)だね」とジョークの中にも実感がこもっていた。

周囲の期待に応え、古馬の頂点に立った。だが、トレーナーの要求はまだまだ高い。「年度代表馬を目指さなければならない。もうひと皮むけてほしい」。次は宝塚記念(6月24日・阪神)へ。秋には天皇賞、JC、有馬記念と王道を歩む予定だ。そして、その先には海外遠征の可能性も。混戦といわれた古馬戦線に仁王立ち。新生サムソンの夢はまだ始まったばかりだ。

【オーナー感無量】

メイショウ軍団を率いる松本好雄オーナーも感無量だ。「直線が長かった。ゴール直前は負けるかと思った。やっぱり競ると強いねえ」と愛馬のしぶとさに感心しきり。念願の盾を手にして「歴史の重みを感じる」と酔いしれた。初めて天皇賞・春に挑戦したのは88年のメイショウエイカン。「エイカンというのも高橋成先生の馬だった。先生はこれが初GIですか。先生の気持ちは計り知れない」と、縁の深いトレーナーに賛辞をおくっていた。

 

 【“名伯楽”も感心】

定年を迎えた2月まで、サムソンを管理していた瀬戸口元調教師は、石橋守とガッチリ握手。「うまいこと折り合いがついていたし、終わってみれば強かったな。詰め寄られて抜かせないのがこの馬らしい」と改めて勝負強さに感心した様子。定年後、購入が可能になった馬券の方は「その前のレースまではユーイチ(福永)の馬ばっかり買ってたのに…」。残念ながら、2着エリモエクスパイアは抜けてしまったようだ。

 

 【エクスパイア2着…ジョージの再現ならず】

大きなハナ差だった。いったんは前に出たエリモエクスパイアだったが、最後は勝ち馬サムソンに差し返されて2着に敗れた。「やったと思ったんだけどね。エリモジョージを思い出したよ。エリモで大久保きゅう舎。うまく再現できればと思っていたんだけど…」と福永は肩を落とした。

調教師とジョッキー。両者は不思議な縁を感じていた。76年の天皇賞(春)。ユーイチの父、福永洋一に導かれたエリモジョージは馬体を合わせて首差制した。管理していたのは大久保正師だ。その息子大久保龍師は納得の表情でレースを振り返る。「少し夢を見たけど…。甘くないってことだね。でも、涙が出たよ。エリモジョージ?そう思いながら見ていたけどね」と感慨深げに話した。

重賞未勝利の原石が手にした盾2着の実績。着差はわずかでも、つかみ取った自信は大きい。

 

 【デルタブルース 予期せぬ大敗】

3番手から早めの進出。注文通りの競馬を試みたデルタブルースだったが、直線でズルズルと後退して、12着に惨敗。「3、4角で動いていったが反応せず。去年と同じ感じ」と岩田は首をひねった。「硬い馬場がよくないのかも」と馬場に敗因を求めたのは角居師。ゴール後、左前の肩に違和感を感じて岩田が下馬したのも、そのあたりが影響したのかもしれない。検査の結果、大事に至らなかったとはいえ、今後の海外遠征プランに影響が出かねない、大敗となってしまった。

 【トウカイトリック3着「悔しい」】

「あ〜悔しい!」。思わず池添は、その場にしゃがみ込んだ。勝ち馬と同じ集団でレースを進めたトウカイトリックだったが、勝負どころの2周目3〜4角で置かれる形に。「あそこでサムソンについていきたかったけど、離されてしまった。合わせていく形だったら…」。直線で盛り返し、鼻、首差の3着まで追い上げただけに悔しさは募る。「惜しかったけど、展開だろうね」と、淡々と振り返った松元省師。「状態に問題がなければ」と、宝塚記念での再戦に早くも意欲を見せた。

 【アイポッパー直線勝負も4着

猛追及ばず、1番人気のアイポッパーは4着に敗れた。計算が狂ったのはスタート。ゲートで長く待たされ「背中を丸めだした」と安藤勝。中団での競馬をイメージしていただけに、後手を踏んだのが響いた。腹をくくって道中は脚を温存。直線勝負にかけたが、前を行く3頭をとらえることはできず。4着が精いっぱいだった。「それなりに伸びてきたけどケツの方ではね。もうひとつ前の位置なら…」。ベテランは唇をかみしめ、競馬場を後にした。

 
メイショウサムソン…牡4歳。父オペラハウス、母マイヴィヴィアン(母の父ダンシングブレーヴ)。馬主・松本好雄氏。生産者・北海道浦河町 林孝輝氏。戦績・17戦8勝。重賞は06年スプリングS、皐月賞、日本ダービー、07年大阪杯に次ぐ5勝目。総収得賞金・705、013、000円。高橋成忠調教師、石橋守騎手はともに初勝利。

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