皐月賞

びっくりヴィクトリー15年ぶり
中央GI139連敗…ジョッキー界の“春<Eララ返上

2007/04/15・中山競馬場

▼ 第67回皐月賞
1着 
ヴィクトリー
田中勝
1.59.9
2着
サンツェッペリン
松岡
3着
カタマチボタン
安藤勝
   
ギリギリしのぎ切った。大きな鼻差。カッチースマイルが大舞台で輝いた。主導権を握った7番人気のヴィクトリーが逃げ切り、クラシック1冠目を奪取した。鞍上・田中勝のJRAGIの連敗は139でストップ。92年の安田記念(ヤマニンゼファー)以来、15年ぶりとなる中央GI制覇を飾った。2着に15番人気のサンツェッペリンが入り、追い込んだフサイチホウオーは惜しくも3着。3連単は162万円超の大荒れとなった。

最ハナを奪ったヴィクトリー(17番)がフサイチホウオー(右)以下の追撃を抑えて皐月賞を制覇

 

 【鼻差差し返した】

15年間、忘れていたGI勝利の味。ヴィクトリーを見事にエスコートした田中勝は、検量室前に引き揚げて来るなり「よっしゃあ」と喜びを爆発させた。交流GIは05年に全日本2歳優駿(グレイスティアラ)を勝ったが、中央GIでは15年ぶり。139連敗中という、不名誉な記録にもピリオドを打った。「クラシックは勝てるとは思わなかった。不思議だねえ」と、しみじみと語った。

負けたと思った。勝負は首の上げ下げで決まった。1角で全体がペースダウンしてハナに立ってから、守り続けてきた先頭の位置。直線では2番手に付けたサンツェッペリンに一度かわされた。「ハナに立ってからいい感じで、しまいも頑張れると思った。わずかに(相手に)出られて、やっぱり駄目かなあと…」。

4年前。会心の騎乗で運んだサクラプレジデントで2着に敗れた。ゴール寸前でネオユニヴァースに頭差かわされ、入線後、ネオの鞍上デムーロに頭をこづかれた。苦い思い出。だが、今回は違った。差し返したところでフィニッシュ。鼻差しのいで栄光のゴールに飛び込んだ。

勝てないGIに悩んだ日々。周囲からも多くの叱咤(しった)激励を受けた。だが、ここ7、8年は自然体でレースに臨めるようになっていた。ヴィクトリーはこの日がテン乗り。「気性の難しい馬なので、機嫌を損なわないようにした。心配だったけど、おとなしかった。馬に乗せられていたね」と、パートナーの頑張りをたたえた。

表彰式では多くの温かい声援が送られ、“カッチースマイル”を振りまいた。次はダービー(5月27日・東京)で2冠を狙う。「いい馬に乗せてもらって感謝している。能力はあるので、また楽しめるんじゃないかな」。15年ぶりの美酒を存分に味わい、そして次の舞台に挑む。


ハナ差の大激戦となった皐月賞は大波乱の高配当

 【異父兄リンカーンの雪辱】

音無師感無量 クラシック初制覇。だが、音無師にはそれ以上に重みがある勝利だった。ヴィクトリーの異父兄リンカーンが手にすることができなかったGIタイトル。「雪辱を果たせて良かった」と満面の笑み。差し返した最後に「いい根性を持っている」と愛馬をたたえた。

ラジオNIKKEI杯2歳S2着後、腰とトモに疲れが出て休養を余儀なくされた。しかし、回復が予想より早く、若葉Sに出走できたのがプラスに働いた。「1回使えたことが大きかった。まだ粗削りだけど、考えながら調教して、ダービーにつなげたい」と2冠獲りへ闘志を燃やした。

 

 【オーナー夫婦対決は妻勝利】

ヴィクトリーのオーナーは、アドマイヤの近藤利一オーナー夫人・英子さん。「レース前、冗談で言ってたんです。“勝”春くんにヴィクトリーで、勝っちゃうんじゃないかってね。抜かされそうになった時は、夫と声を出して応援しました。抱き合って喜びましたよ」と笑顔が弾んだ。一方、オーラの利一氏は「あの位置からではなあ。いままでで一番悔しいよ。まあ、女房の馬が勝ったからいいとしよう」と気を取り直して引き揚げて行った。

 


自身のGI連敗記録を止めた田中勝はヒーローインタビューを終えて歓喜のジャンプ

 【ホウオー負けた】

最も強い競馬はした。それでも懸念していた不安が的中したと言わざるを得ない。フサイチホウオーは最速上がり33秒9で豪快に追い込んだが3着。くしくも01年の父ジャングルポケットと同じようなレース内容で同じ着順に終わった。

安藤勝の言葉が、この馬の特徴を象徴している。「ちょっとゲートで遅れたからあの位置に。GOサインにすぐに反応しないからね。最後にやっとエンジンがかかってきた感じだった」。勝負どころで外に出し、一完歩ずつ差を詰めたが、及ばなかった。

無敗馬にもかかわらず2番人気。“府中向き”というファンの下した判断が的中した格好だ。それだけに巻き返しへの期待は大きい。「東京二千四百メートルの方が競馬は全然しやすい。隠れたギア?うーん、まだ出てないかな」主戦はダービーでの反攻宣言とともに、まだ能力を出し切ってないことを強調した。父同様、得意の府中で―。世代最強を証明するためには、次こそが絶対に落とせない一戦となる。

 

 【ハナ差ツェッペリン松岡悔しさ爆発!】

激しいせめぎ合い。この日が誕生日だった伏兵サンツェッペリンは、首の上げ下げで2着に敗れ、大金星を目前で逃した。ヴィクトリーの2番手を進み、ゴール前で一度は前に出たが、最後の最後に力尽きた。引き揚げてきた松岡はヘルメットを地面に叩きつけ、「もうちょっとだった」と悔しさを体で表現した。
 重賞ウイナーながら15番人気。胸を張れる銀メダルだ。「自分の競馬をできたし、満足はしている。ダービーで巻き返したい」と松岡はリベンジを誓った。斎藤誠師も「自分の競馬ができた。ここまできたら勝ちたかった」と悔しがった。次はダービー。皐月賞に続き追加登録料を払っての参戦になる。夢の大舞台でこの日の悔しさを晴らす。

 

 【武豊悔し「残念」】

4着オーラ 1番人気に推されたアドマイヤオーラ。積極策で勝った弥生賞から一転、フサイチホウオーをマークする形でレースを進めたが、勝負どころで離され、4着まで追い上げるのが精一杯だった。武豊は首をかしげながら「うーん、大きなチャンスだと思ってただけに残念」と表情を曇らせる。「スタートがよくなかった。最後は伸びているんだけど、前が止まらなかったからね」と唇をかんだ。

 

 【2歳王者沈む

8着ドリジャニ 2歳チャンプのドリームジャーニーは8着。前残りの展開に手も足も出なかった。「掛からないようゲートはゆっくり出した。この馬の競馬はしたんだけど、この流れではね…」と蛯名は振り返る。池江寿師も「この馬も上がり3F34秒1の脚を使っている。展開が向きませんでした」と話す。次はダービー。直線の長い府中で今度は持ち味を生かしきりたい。

 

 【痛恨…大外ロス

9着ココナッツ キャリア2戦で皐月賞に駒を進めてきたココナッツパンチは、大外枠がこたえ、9着に敗れた。スタートから外々を回らされるロス。直線で差を詰めるも上位には届かなかった。吉田豊は「大外枠できつかった」とレースを振り返り、大久保洋師も「外を回らされたからね」と残念そうな表情を見せた。ダービーは賞金的に出走が微妙となるが、トライアルは挟まず、直行する予定になっている。

 
ヴィクトリー…牡3歳。父ブライアンズタイム、母グレースアドマイヤ(母の父トニービン)。馬主・近藤英子氏。生産者・北海道 ノーザンファーム。戦績・4戦3勝。総収得賞金136、000、000円。

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