【ボート】今年のCM撮影は命がけ

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 今年のボートレースのCMは、タレントの渡辺直美(29)が14年以来、3年ぶりに再登場。今月1日から放映されている「さくら編」では、春めいた着物姿でCMを彩っている。

 ここ数年のCMでは、独特な世界観が主体となっていたが、今回のシリーズでは迫力のレースシーンが久々に登場。「さくら編」では、コーナーを華麗に駆け抜けるレースシーンや水面を疾走するボートの映像が、軽快な音楽と共に描写されている。

 注目は、なんといってもCM第1弾「渦潮編」で登場した疾走シーン。選手にギリギリまで接写した視点から、コーナーで華麗なテクニックを披露する映像だ。ドローンの撮影にしては、選手との距離が近すぎる。一体どのようにして撮影されたのか…?その答えは、ボートレース振興会が運営するサイト「ボートレースラウンジ」で公開中の、メイキング映像で明かされた。

 選手のヘルメット頭上にプロペラ風の支柱が設置され、両サイドには接写可能な小型カメラを固定。水面への移動と共に、支柱が選手の周囲を旋回して撮影が行われた。映像では、カメラが回転することで得られた“360度のパノラマ画角”が、猛スピードで疾走する水面や選手に肉薄。かつて体験したことのない、ど迫力の映像が作り出された。

 撮影に参加した愛知支部の後藤陽介(37)=86期・B1=に話を聞くと「カメラが重くてバランスを取るのが大変でした」と苦労を語る。「最初は試験的に撮って、どの絵が撮れるか分かってなかった。面白い映像が撮れたら…、と思っていたら、あまりにも内容が良かった」と会心の映像が生まれ、選手、スタッフもヒートアップ。他にも模擬レース中のシーンやあらゆる状況の映像が撮影され、今後の出番を控えているそうだ。

 CM撮影は昨年11月初頭、後藤の師匠でもある原田幸哉をはじめ、岩瀬裕亮、鈴木茂高ら愛知支部の精鋭7人が蒲郡ボートに集結。熱意あふれる製作スタッフ陣と共に、朝から晩まで、4日間にわたり入念な撮影が行われた。

 「当初は僕も映ってましたが、途中からカメラ担当になったんですよ」と後藤は撮影用のペアボートでハンドルを握り、状況に応じた撮影に貢献した。タッグを組んで撮影したカメラマンは、ペアボート前席に設置された座椅子に座り、命綱なしで撮影に臨んだ。「ベルトがあると、転覆したときに外れませんから命を落とす危険がある。やる気のある方で、迫力のある、激しい映像を撮ってくれましたね」と命がけで撮影したカメラマンのプロ根性を絶賛した。

 後藤のプロ魂も負けてはいない。ハリウッド映画のカーチェイスでは、スピード感を演出する手法「対面交差」が頻繁に用いられる。全速で疾走する車を、スタッフが逆方面から猛スピードですれ違いながら撮影するスタイルだ。今回のCM撮影でも、模擬レースや、ボートの疾走シーンでその演出方法が使われている。

 一般道路に比べて、ボート場の水面ではタイミング取り方や、向かってくる相手との距離感がつかみづらい。一歩間違えると、正面衝突の危険性も大いに伴う危険な状況だ。「逆方面から向かってくる6人に対して、遠近感もつかめないし、本能的に握れなくなる。相手が通過する瞬間を見据えて、スタートの起こしと同じタイミングで手を挙げてもらった」と長年培ったレースの経験を元に、交差するタイミングをきっちり合わせた。スピード感あふれる映像は、それらの苦労が結びついた結晶でもある。

 「すごいカッコ良く撮ってもらって、やりがいがありました」とCMスタッフに感謝の意を込めた後藤。まだまだ「命をかけてもらいました」と迫真のシーンは多々あるようで、今後のCM展開が実に待ち遠しい。(関西ボート担当・保田叔久)

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