【ボート】フライングにも“負けないで” 尼崎期待の新星・福岡泉水

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 先月30日まで福岡で開催された「SG・ダービー」では、平山智加(31)=香川・98期・A1=が女子では史上初となる、SGドリーム戦の1号艇で出走。見事1着でゴールして歴史に名を残した。近年は女子レーサーの活躍が著しく、「G2・レディースチャレンジカップ」(22~27日・大村)や、年末の「G1・クイーンズクライマックス」(12月26~31日・平和島)に向けた女子トップレーサーたちの戦いも、ファンとしては目が離せないところだ。ボートレースでは、11月1日から新期がスタート。それと同時に、119期の新人選手(男子21名、女子6名)が全国各地のボート場で、数々の夢や思いを胸に秘め、選手としての第一歩を踏み出した。

 中でも注目を集めたのは、3日に尼崎ボートの一般戦で行われた初日1R。兵庫支部では9年ぶりの新人女子選手、福岡泉水(19)のデビュー戦だ。キュートなルックスはデビュー前から評判となり、場内には「福岡泉水デビュー戦」のロゴ入りスポーツタオルを手に、地元の淡路市から駆けつけた応援団をはじめ、多くのファンがコース周辺で声援を送った。しかし、大外6コースからの出走はコンマ04のフライングとなり、選手生活は波乱の門出となってしまった。

 前検日では「意外と緊張しなくて、楽しみの方が大きい」と語っていたが、「水面では冷静になろうと思いましたが、フライングで頭が真っ白になってしまった。同期の中で、いいトップバッターになれたらいいと思ったんですが…」とレース後はさすがに悔しさを隠せない様子だった。

 2日目以降は、アクシデントからの巻き返しを狙ったが、節間の結果は666着。レース後の練習でも、2M付近のターンで舟が流れる姿が何度も見られた。

 「全く歯が立たないと言いますか、プロの道は険しいですね…」

 プロの世界の現実と厳しさを体感し、さすがに弱音も口にしたが「課題はまず、当たり前ですがターン回りをしっかり回ること。実戦でも、他の人を見過ぎて自分がレースできてない」と現在の状況を振り返り、「道中の行き方や、ペラ調整など先輩方がしっかり教えてくれるので、学んだことをレースできっちり生かしたい」と気を引き締めていた。

 彼女が目標とするレーサーは、兵庫支部の先輩、中谷朋子(40)=78期・A1=だ。「まくりも差しもスピードがあって着が取れている。尊敬できますね」と大きな目を輝かせる。当面の目標としては「まず水神祭ですが、勝つ時はスタートをバッチリ決めて、差すよりもまくりで勝ちたい」と男子顔負けの豪快な勝利のイメージを語ってくれた。

 そんな福岡に「小さい頃からレーサーはいいぞ、と言われ続けてきた」と、ボートレースへの道を切り開いたのは、父親の清孝さん(44)。かつてボートレーサーへと憧れた夢は、自らの子供が達成し「子供の夢より、自分の夢がかなってうれしいですね」と表情を緩めた。清孝さんは、90年代にヒット曲を連発した音楽ユニット「ZARD」のボーカル、坂井泉水さんの大ファン。「男でも女でも、生まれる前から名前は決まってました」と自らの強い意向で“泉水”と名付けた。数々の名曲でファンを魅了した坂井泉水さんのように、「少しずつ勉強して強くなって、ファンを大事にできるようなレーサーになってほしい。(フライングも)いい経験だと思って、気持ちをリセットしろと言いますよ」と優しい親心をにじませた。

 まだまだ選手としての実力は発展途上だが、ZARDの名曲「負けないで」のように、初勝利のゴールは近づいている。福岡泉水は困難を克服して、一流選手へのはるかな道を歩み始めた。(関西ボート担当・保田叔久)

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