【凱旋門賞】目下6連勝中の英国馬ポストポンドが中心も大混戦
「凱旋門賞・G1」(10月2日、シャンティイ)
欧州最高峰の一戦が迫ってきた。日本馬の海外遠征時にコーディネーターを務める田中敬太氏が、今年の凱旋門賞をナビゲート。中心は目下6連勝中の英国馬ポストポンドで揺るがないが、主力級と伏兵の間にさほど力差のない大混戦とも。誰もが手探りの海外競馬を“事情通”が斬る。
海外のレースだからといって馬券を買うのに気構える必要はない。我々が最もよく知るマカヒキを基準にそれ以上に強いと思う馬を買えばいいのである。
その候補に真っ先に挙がるのがポストポンド(英国・牡5歳)だ。昨年の夏以降4つのG1を含む6連勝中。欧州の古馬中距離路線トップの座を1年半にわたって守り続けてきた。
連勝街道が始まった昨年7月の英G1“キングジョージ”こそ鼻差の勝利だったが、以降はヒヤっとする場面が一度もない完勝ばかり。常に3、4番手の好位を取り、余裕十分に前をとらえると、息の長い末脚で後続の追撃を封じる安定感抜群の競馬を続けている。
ただ、ここ2年の欧州の古馬路線は駒不足の印象は拭えない。モンジュー(99年V)、ハリケーンラン(05年V)、トレヴ(13、14年連覇)など、過去の欧州の名馬に抱いた畏怖の念をどうしても感じることができないのも事実である。
3歳勢ではデビューから8戦無敗の牝馬ラクレソニエールが最有力か。仏1000ギニー(日本の桜花賞にあたるG1)は逃げ切り、仏オークス・G1では一転して後方から外差しを決めた。この自在性は多頭数になる凱旋門賞では大きな強みになる。不安を挙げるなら仏オークスで後続につけた着差が小さかったことか。同じく無敗で凱旋門賞馬となったザルカヴァ(08年)とトレヴは、仏オークスでもっと派手な勝ち方をしていた。
今年は主力級と伏兵の間にさほど力差のない、大混戦。少しの運が味方をすれば勝ちに手が届く位置に7~8頭がひしめきあっており、マカヒキもそのうちの一頭だ。密集する馬群にひるまず、前があいた瞬間に切れる脚が使えれば勝機が見えてくる。
また、こういうときには大レースの勝ち方を熟知した有力厩舎の馬が怖い。凱旋門賞最多7勝を誇る地元フランスの名門、A・ファーブル厩舎が送り出す昨年3着馬ニューベイ(牡4歳)、アイルランドの名伯楽、A・オブライエン厩舎が送り出すファウンド(牝4歳)、マインディング(牝3歳)、セヴンスヘブン(牝3歳)あたりの上位食い込みにも警戒が必要だろう。(海外競馬コーディネーター・田中敬太)
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田中敬太(たなか・けいた)82年、滋賀県生まれ。06年から角居厩舎のレーシングマネジャーを務めたのち、現在はフリーとして海外競馬に関する情報の収集、海外遠征の提案や計画、また遠征馬に帯同し、海外の競馬主催者や輸送業者との段取り・折衝を行う海外遠征マネジメント業を営む。14年のドバイDFを圧勝したジャスタウェイや、今年のドバイ、米三冠レースで奮闘したラニにも帯同。凱旋門賞でもキズナ、ジャスタウェイ、ゴールドシップの挑戦をマネジメントした実績がある。