一抹の寂しさを感じた小倉競馬場

 ダートコース内からスタンドを仰ぎ見る。トレセンより浅く、じゃりじゃりした感触が伝わる=小倉競馬場(撮影・石湯恒介)
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 立秋を目前に控えた8月6日、数年ぶりに小倉競馬場での調教取材に訪れた。

 調教前に厩舎地区へ向かってみたが、馬場が開く直前で、広場には最も人馬が集まる時間帯にもかかわらず、まばらな人影、思わず「少なっ」と言葉が漏れてしまう。

 調教を見るためのスタンド内に入ってみても状況は同じ。お茶やコーヒーを入れてくれるおば…お姉さんたちも「10年後には私らもいなくなって自販機だけになってるかもね。」と寂しげだ。私の知る以前は軽食も作ってくれて報道陣御用達だったらしいが。

 輸送事情が良くなったために滞在が減ったとは耳にするが、中国道の全線開通はもう30年以上前の話。それ以降も滞在数が減り続けているのは他の理由もあるはずだ。

 厩舎の方に聞いてみるとやはりというべきか、まず施設の充実度が挙げられた。トレセンには坂路やプール、逍遙馬道といった設備が備わっているが小倉ではそうはいかない。

 そして何より馬場が芝とダートのみでウッドチップコースがないのがネックだという。固い芝コースを普段の調教で使うことは少なく、ダートが中心となるのだが固い・柔らかいとは別に砂質、目の粗さが問題となる。

 「蹄なくして馬なし」という言葉が示すとおり競走馬にとって蹄は生命線。蹄鉄をはいて保護はしているがその内側、蹄底と呼ばれる部分が摩擦で削られ、すり減ってしまうのだ。

 そんな馬の状態を内外からチェックしてくれる獣医もいない。いないと言えば語弊があるか。JRAの診療所には獣医が常駐しているので診てはくれるが、トレセンではいわばかかりつけ医のような人が毎日厩舎に来て診てくれるのだ。緊密さで両者は比べるべくもないだろう。

 ここまでデメリットを書いてきたが、もちろん良いところもある。まずは輸送減りの心配がないからしっかり乗り込めること。イメージとしては1本多く乗れる感覚だそう。そして特に若駒にとっては環境に慣れて落ち着きが出ること。さらに予定の微調整が効きやすいこと。トレセンでは開場から4時間で乗り手の都合や施設の混雑、馬場状態の変化などを考慮して約20頭のトレーニングを終えなければいけない。小倉滞在だと2頭ないし4頭で3時間半使えるのだ。

 美点欠点を列挙したが、どちらが良いかは結局のところ馬によるのだろう。では人にとっては?蛇足ながらうかがうと「酒もうまいし飯もうまい」が第一声。そして前述の時間のコントロールがしやすいため「体が楽」という意見が聞かれた。

 逆に「お酒も飲まないしヒマで…」という人も。メリット私的ランキングでは圧倒的に「上司がそばにいない」だと思うのだが。次位は「家内がそばにいない」ですね。

 ともあれ夏の風物詩といえば小倉競馬。涼しい北海道もいいが夏は汗をかくものだ。輸送であれ滞在であれ、汗だくでがんばる人馬とともに盛り上がっていきたいものだ。(写真と文=デイリースポーツ・石湯恒介)

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