「エリザベス女王杯・G1」(15日、京都11R)
競馬の怖さも体現し、見事な逃走劇を演じた。統一女王決定戦を制したのは、11番人気のクィーンスプマンテ。ハナを主張した重賞未勝利馬がそのまま押し切り、鞍上の田中博康騎手(23)=美浦・フリー=に感涙のG1初制覇をもたらした。勝者とともに道中で後続を大きく引き離し、2番手を進んだテイエムプリキュアが2着に粘って3連単は154万円馬券に。1番人気のブエナビスタは直線で猛然と追い込んだが、3着に敗れた。
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「ウォー!」。3、4コーナー中間、京都名物の坂のアップダウン。ターフビジョンに各馬の隊列が映し出されると、スタンドを埋め尽くしたファンからは何とも言えないどよめきが起こった。
逃げるのは田中博騎乗の11番人気クィーンスプマンテ。直後にテイエムプリキュアが続く。ブエナビスタは…そこから20馬身ほど後方にいる。先頭を走る田中博には、単勝1・6倍の大本命馬の姿は見えなかった。
「テイエムプリキュアさえ振り切れば…」。頼む、粘ってくれ!直線は何度も右ステッキを振り下ろし、無我夢中で追った。05年の2歳女王であるプリキュアのしぶとさも、今春の2冠馬ブエナの鬼脚も届かない。エリザベス女王杯の逃げ切り勝ちは、古馬混合となった96年以降では07年ダイワスカーレットとこの馬の2頭だけ。そして今回の大金星は、99年メジロドーベル以来となる関東馬によるVだった。
ゴール板を過ぎると、田中博のほおを自然と涙が伝った。「本当によく頑張ってくれました。馬が一生懸命に走ってくれたから…」。生まれて初めての“うれし泣き”。人馬ともに初となるG1での勝利の美酒に、23歳の若武者が酔いしれた。
デビュー4年目の今年は、減量の恩恵がなくなった。また夏には落馬によるケガで、レースに騎乗ができないつらさも味わった。「危機感を持っていました」。競馬に対する真摯(しんし)な気持ちも、勲章を得る原動力のひとつとなった。
パドックでスプマンテにまたがったとき、小島茂師はこうささやいてきた。「この馬は6回逃げて、5回勝っているんだ」。この言葉が、鞍上に勇気を与えたという。「人気はないけど、自信はありました」。指揮官はしてやったりの表情だ。
9月末から栗東に滞在させ、坂路で徹底的に鍛え上げた。「今回は攻めに攻めて、馬体重はプラスマイナス0。実が入った証拠だと思います。ひとつひとつ階段を上がってくれました」。ブラックエンブレムで昨年の秋華賞を制したのと同じ“栗東効果”を口にした。スプマンテは年内での引退が決まっているが、人馬が絶妙に呼吸を合わせた“逃走劇”はファンの心に永遠に残ることだろう。







