「家族ゲーム」「失楽園」などの作品を手がけた映画監督の森田芳光さんが20日午後10時15分、急性肝不全のため都内病院で死去した。61歳。以前からC型肝炎を患っており、1カ月ほど前から主治医に自宅療養を指示されていた。来年3月には新作「僕達急行 A列車で行こう」が公開予定で、年明け早々にプロモーション活動が始まる矢先での急逝。「森田組」の役者、関係者はあまりにも早すぎる死を惜しんだ。
監督生活30年。鋭い洞察力で変貌する時代に切り込み続けた名匠の、突然の訃報だった。
今月13日から体調不良を訴え、都内病院に入院していた。関係者によると、森田さんは以前よりC型肝炎を患っており、1カ月ほど前には体調が悪化し、主治医から自宅療養を指示されていたという。
しかし、仕事関係者にも体調不良の気配をみせることは一切なく、周囲に病のことは伝えていなかった。入院直前に会った近所の女性は、奥さんが「(夫が)病院の方がいい、って言うから戻るのよ」と心配をかけまいと話していたことを明かした。
約3カ月前には「僕達急行‐」のスタッフと食事会を開き、盛り上がる雰囲気の中で来年公開の作品のヒットを誓い合った。年明けにはプロモーションのための取材対応をフル回転でこなす予定も組まれていた。
森田さんは斬新なテーマやスタイルで映画作りに挑み続け、ユーモア漂う独特の語り口で軽やかに時代を切り取った。故松田優作さんが家庭教師を演じた「家族ゲーム」(83年)では横一列に並び座る食卓の風景で空疎な時代の空気を描写、96年の「(ハル)」では時代に先駆けインターネット上での男女の出会いを描き、役所広司と黒木瞳が不倫愛を演じた「失楽園」(97年)は社会現象となった。
iPadを発売直後に入手するなど新しいアイデアへのアンテナが敏感で、「家族ゲーム」で受験生を演じた宮川一朗太は、森田さんが「俺は若い連中の考え方をすべて分かっているわけではない。どんどん変えてくれ」と子役にもアイデアを求めたことを明かした。
昨年11月、本紙の取材には「僕は“新しい映画”を作りたい。『家族ゲーム』では新しいホームドラマを、『失楽園』では新しい恋愛映画を作りたかった」と話していた。
昨年秋に撮影された遺作「僕達急行‐」では松山ケンイチと瑛太を主演に、鉄道マニアの青年2人のコメディードラマを描いた。
また、森田さんは学生時代に競馬記者を志したほどのギャンブル好きで、僚紙「馬三郎」ではコラムを執筆、「監督はキャリアがあるともてはやされるけど、ギャンブルは負けることができるのがいい」と話していた。
作品同様に、人間味あふれる監督だった。
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