坂東竹三郎

 上方歌舞伎を代表する女方・坂東竹三郎。若いころは美貌で鳴らし、近年は老け役に回ることが多い。格調高い武家の妻から、市井の愛情深い母親、意地悪な敵役までこなし、登場するだけで舞台が引き締まる。上方の生き字引的存在で、市川猿之助らをはじめ、東西を問わず慕う役者も多く、上方歌舞伎を後世に伝えるべく、若手への指導にも余念がない。昨年5月に体調不良で休演しファンを心配させたが、10月の東京・新橋演舞場でのスーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』で復帰。3月の大阪松竹座の同公演(2016年3月1~25日)でも女医のベラドンナを演じる。

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 大阪松竹座でもベラドンナ役で出演させていただきます。「スーパー歌舞伎II」で新作を上演されると聞いたときに、すぐに猿之助さんに「出させてほしい」と直訴したんです(笑)。

 それが、昨年5月に体調不良で入院いたしまして、当初はめまいだけだったので軽く考えていたのですが、猿之助さんに漏らすとすぐに病院を紹介され、入院することになりました。復帰は10月の東京・新橋演舞場公演『ワンピース』と決まり、猿之助さんは「本当に大丈夫?」と心配して下さいましたが、どうしても出たい一心で「出るために治療しますから」とお願いして、出演させていただきました。おかげさまで、いまは体調もすこぶるよく、3月公演に向けお稽古させていただいています。

 漫画は読んだことがなくて。猿之助さんも「膨大だし、読まなくてもいいよ」とおっしゃって下さったので、台本に忠実に演じました。ベラドンナは原作とは少し違っていますが、最後に物語のテーマになるセリフもあり、やりがいがあります。全体をみると「さすが四代目!」という感じですね。猿之助さんとは親しくさせていただいてますが、すごく研究熱心。古典は古典、新しいものは新しいものとして意欲的にいろんなものに挑戦していらっしゃる。

 私自身は関西にずっと住んでいる上方役者です。テレビでお笑いの方が話しているのが大阪弁だと思われていますが、あれはどちらかというと河内弁。上方の歌舞伎で使っているのは柔らかな言葉で、はんなりとした船場言葉に近いですね。若い人は、そうしたはんなりとした匂いというか、本来の大阪弁の持つ品というものを出すのが難しいんですね。

 私の若いころは、上方歌舞伎は不振も不振、公演がほとんど無い状態でした。だから舞台に出たくても舞台がない、それならばと、生意気なようでしたが、自主公演を始めました。20数回続けてまいりましたが、2013年8月の国立文楽劇場がその集大成でした。これまで、本物の鯉をくわえた『怪異 有馬猫』や『夏姿女團七』など、誰もやらなかった作品を掘り起こしたり、どうせやるなら珍しいものをと思ってやっておりました。「観てよかった」と思って頂くのが使命やと思いやってきましたから。

 またやらないの?とおっしゃっていただくのですが、もう年なので準備が大変(笑)。でも若い方に教えることや、私の知識を語ることくらいはできる。使命というほどではありませんが、上方歌舞伎を残したい一心でやってきて、気が付けばこの年になっていました。わずかな力ですが、生きている限りは上方歌舞伎の力になれればと思っています。

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 坂東竹三郎(ばんどう・たけさぶろう) 1932年8月4日生まれ。屋号は音羽屋。理容室を営む一般家庭出身で、49年5月尾上菊次郎の弟子となり、大阪・中座『盛綱陣屋』の腰元で尾上笹太郎を名のり初舞台。59年三代目坂東薪車(しんしゃ)と改名し名題昇進。67年3月菊次郎の名前養子となり、朝日座『吉野川』の久我之助ほかで五代目坂東竹三郎を襲名。

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