【大場久美子 8】マンホールはいかがですかぁ~

 鋳物の町川口市で私は生まれた。父の短気のおかげで、仕事を転々として引っ越し続きの私たち家族は、いったん父の故郷でもある北海道岩見沢市に住むものの生活が安定しなく埼玉県に戻ってきた。

 私が小学校三年生のころ、占いかなにかにみてもらったらしく、父をたとえると鉄、母をたとえると火。鉄と火の組み合わせだから、川口市の産業でもある鋳物屋をやろうということになったらしい。考えているようで考えていない楽観的な再出発だ。扱っていたものは、マンホールの蓋やルーフドレンのような衛生管備だった。

 川口の荒川の土手に並ぶ(今はもうないが)鋳物工場に両親は勤めていたことがある。鋳物型に真っ赤に煮えたがる金属を溶融したものを流し込む父の姿は勇ましく見えた。この頃、近所の男の子の間で、ベーゴマ遊びがはやっていた。バケツに雨がっぱを張り鋳物でできたベーゴマを回し敵のベーゴマをはじき出す遊びだ。まだ小さかった私はうまくコマを回せない。それを知った父が普通は薄いコマを高ベイといって高さがあり糸がたくさん巻けて回しやすいベーゴマを『久美子』と名前入りで作ってくれた。バケツからはじき出されたコマは勝者のものとなるが、大きくて名前の入った私のコマはさすがに誰ももらってはくれなかった(笑)。

 父はいつもステテコとサンダル姿でマンホールにニスを塗っていて体中真っ黒だった。父を思い出すときはあのニスの油くささも一緒に思い出す。

 最近ではマンホール女子といって全国のマンホールを見たり写真におさめたりするのがはやっているらしい。

 私もマンホール屋の娘。街中でマンホールを見ると立ち止まって柄を見たりマンホールの上でぴょんぴょん跳ねて強度をつい確かめてしまう。その私の姿を見た人に『あ…マンホールオバサン!(女子?笑)』と思われているのだろうか(笑)

編集者のオススメ記事

芸能人コラム最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス