映画「野火」ソフト化されても“火勢”衰えず 毎年、終戦記念日に見る映画に

 戦後70年の昨年、大岡昇平による戦争文学の傑作「野火」を、世界的な映画監督で俳優の塚本晋也(56)が自身の監督、主演で映画化した。毎日映画コンクールで主演男優賞と監督賞をW受賞するなど高評価を受けたが、それで終わりではない。既にソフト化されているにもかかわらず、今夏、全国25劇場でアンコール上映され、今月5日に書籍「塚本晋也『野火』全記録」が発売されるなど、異例の広がりを見せている。塚本はデイリースポーツに「戦後71年、72年と、もっと盛り上がらないといけない」と語った。

 「野火」では太平洋戦線末期のフィリピン戦線で、人体が破壊されてモノと化し、人肉を食べるといった、人間が加害者にも被害者にもなる地獄絵図を生々しく描いた。

 自主製作・配給に踏み切った塚本は「自分の主観としては、明らかに戦争が近づいているとしか感じない。ボーッとした頭に鉄ついを打ち下ろす映画を撮らなきゃいけなかった」と動機を振り返る。

 映画は世界27カ国・地域の37映画祭で上映され、国内では北海道から沖縄までミニシアターを中心に公開。ブルーリボン賞、キネマ旬報、映画芸術などでベストテン入りした。

 国内外をきめ細かく回った塚本は「描きたかったことが想像以上にお客さんに伝わった。遠くなっていた戦争を身近に感じるきっかけを若い人に生々しく伝えられ、戦争したくないという思いを強くする結果を得られたのは本当に良かった」と手応えを口にした。

 その上で「1年だけやって終わりではなく毎年終戦記念日に見るという映画にしていきたい」と強調。実際に今年も8~9月に北は岩手から南は鹿児島まで、アンコール上映が行われるという異例の展開になっている。

 塚本は「全記録」の出版について「去年で終わった映画の本を作ることはない。これからまたやる、という前提の本です」と説明。同書は作品にまつわる諸事に加え、独立映画製作や映画祭出品の方法、全国ミニシアター行脚など後進への指針にもなっており、「むっちりしていて濃密。役に立つ」と、仕上がりに自信を見せた。

 大ヒット中の映画「シン・ゴジラ」では主要登場人物の生物学者を好演し、俳優としても存在感が高まっている。次回作の構想を「アメリカの黒人の兵隊さんの、強烈な戦争後遺症を書いた手記がある。アメリカの人たちにも見てもらいたい」と明かしていた。

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