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映画「はやぶさ」のモデル・川口淳一郎 3

 ‐はやぶさはまさに日本の創造力の証しとなりました。

 「はやぶさの構想のスタートラインは、どっかに例があったものではないんです。まったくの独創ですよね。それをやり遂げるための技術も全部、オリジナルのものですよ。世界からしたら、日本はプロダクションの国だから安心して見てられる。新しいことをするはずはない、と。そうじゃない。日本は、オリジナルのものを考え出して創造して、やり遂げることができた国。子供たちにもそれを糧に、次の世代を作ってほしいと思います」

 ‐そもそも、宇宙に興味を持たれたきっかけは何だったんですか。

 「結局、動く機械、飛ぶ機械、自立的な機械を作りたいというところが、基本だと思います。アポロも大きなきっかけでしたが、アポロの次の、木星、土星の探査や、1970年代中ごろのバイキングという火星着陸機とか、無人の機械が自立的なことをやってのけて。距離もとんでもなく遠いところで、どうして正確に飛べるのか、それをやってみたいというのが一番のきっかけです」

 ‐宇宙の道に進もうと決めたのは、どのタイミングですか。

 「実際に宇宙をやってみようと思ったのは、大学が終わって大学院にいくときですね。それまでは大まかには理系で、理学部と工学部なら工学部で。理学部の望遠鏡で見ても、見られる星は限られてるので、あっという間にあきてしまうので。工学部で動く機械、飛ぶ機械、自立的な機械と方向を決めてるだけで、それ以上のものは何も決まってないんですよ」

 ‐今は、やりたいことを見つけられない学生も多いですよね。

 「高校から大学に行くときに、進路を自分で決めるというのは、たぶん不可能なんです。こんなことを言うのは何ですが、やりたいことは大学まで見つかるわけないと思いますよ。HOWしか学んでない。やり方だけ、ツールだけ学んでる。そんな人が『さぁ、やってみろ』と言われて、できるわけないです。新聞だって、そうでしょ!?記事を書けと言われると、書けるかもしれないけど、新しい連載や企画を考えるのは、新入社員がすぐできるわけがない。普通の人は、大学が終わって就職して何年もかかって、人によってはうまく転がらない人も出てきて、やめていく人もいるでしょうけど、転がる人は数年後に新しい企画を考えることができるようになっていく。そういうふうに転換していくんですよ。その間、その社員はずっと悩むんでしょうね。皆たぶんそうですよ。勤め始めて数年間は悩み続けますよ」

 ‐はやぶさの映画化オファーが来たときは、どう思われましたか。

 「東映の坂上順プロデューサーが来て、渡辺謙さんでと言うので、最初は冗談だろうと思いましたね。そんな大きなテーマになるか、自分では自信はないですから。そういうビジネスをしているわけでもないですし。ただ、映画だと国民の方々への発信力が違うので。JAXAがホームページで何かを作っても、何人が見るんですか、ということですし。テレビ番組で取り上げられても、ものすごく周りの理解度が進みますね。驚くほど進む。今度は映画ができあがることで、もっと進むだろうし、それはありがたいことですね。我々の活動って何だを理解してもらえるじゃないですか。難しいことを言うつもりないですけど、こういう宇宙開発、科学技術に取り組むことが、国民にとって次の自信と希望を持てることにつながる、ということだけは分かりますよね。自信と希望という夢で、メシが食えるかもしれないということですよ。そこは伝わるんじゃないかと」

 ‐謙さんがクランクインする前に、2人きりで杯を交わされたそうですが、どんな話を。

 「謙さんとしては役作りでしょう。まぁ、どういう人間かを知ろうと思ったんでしょうね。私からのアドバイスはあまりないですよ。謙さんはマジメなんだろうと感じましたね。彼は役者にとどまらず、自身が企画して歩いてる気がします」

 ‐映画を見た感想は。

 「いわゆる娯楽ものではないので、そこは東映としては大丈夫かなと(笑)。でも、映画はやはりこういうものでないとね、と思いました。重厚な、本物が持つ力があるじゃないですか。画面を見れば見るほど、そう思います。光と影の使い方とか、音楽もすごくよくできている。本物だと思います。でも最近は、文化の文化らしいところを考えなくなる風潮。真正面から作った映画を、ちゃんと見る人が見ればいいんですけど、世間は軽薄短小なものになりがちなところがあるのでね。正しい本物の映画が持つ醍醐味(だいごみ)を味わってもらえれば、皆さんに気に入ってもらえるはず」

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 川口淳一郎(かわぐち・じゅんいちろう) 1955年9月24日生まれ、青森県出身。JAXA宇宙科学研究所宇宙航行システム研究系教授、同研究主幹。京都大学工学部機械工学科卒。83年に東京大学大学院工学系研究科航空学専攻博士課程修了し、旧文部省宇宙科学研究所に助手として着任。ハレー彗星探査機「さきがけ」、工学実験衛星「ひてん」、火星探査機「のぞみ」などのミッションに携わる。







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