豊ノ島が引退…さらば小兵業師 三賞10度“準V”5度の名関脇、年寄「井筒」襲名へ

 日本相撲協会は17日、技巧派小兵の元関脇豊ノ島(36)=本名・梶原大樹、時津風=が現役を引退し、年寄「井筒」を襲名したことを発表した。同日、理事会で承認された。三役在位13場所、三賞10度、金星4個を獲得した実力にトークもさえた人気力士。晩年は両足の故障に耐え、家族の支えで戦い抜き、18年の土俵人生を完全燃焼した。今後は時津風部屋付き親方として後進の指導に当たる。

 18年間、身長168センチの体をボロボロにして36歳、豊ノ島が燃え尽きた。新型コロナウイルスの影響で引退会見は開けず、電話取材で「終わってしまえば長いような短いような、あっという間。もう終わりかという感じ」と、心境を語った。

 巧みな差し身に、肩すかしなど技も一級品。10年九州場所では14勝を挙げながら、横綱白鵬に決定戦で敗れて優勝を逃した。V戦線の常連で“準優勝”は5度と、頂点はあと一歩届かなかった。

 思い出の一番はこの白鵬との決定戦に加え、16年初場所13日目の大関琴奨菊戦。とったりで勝ち、優勝争いをしていた同期生のライバルに土を付けた。千秋楽、初優勝した琴奨菊と抱き合って祝福する友情は感動を呼んだ。

 晩年は度重なるケガとの戦い。16年名古屋場所前に左アキレス腱を断裂。丸2年の幕下生活を乗り越え、18年九州場所で十両に復帰した。幕内にも返り咲いたが、維持する力は残っていなかった。

 十両だった今年初場所で負け越してまた幕下に降下。自身は引退意向も家族の慰留もあって春場所まで続行した。無観客場所となった先場所、東幕下2枚目で2勝5敗と負け越し気力、体力とも限界。「大阪(春)場所が通常開催でも無観客でも負け越したら辞めるつもりだった。僕の中で決めていた」と明かした。

 アキレス腱断裂前は「孤独だった」と土俵は自身との勝負だった。だが負傷後、家族の支えを痛感した。「両極端を経験できた」と満点の18年間だった。

 体が小さな入門希望者を対象とした第2新弟子検査合格者で初の関取は「悔いはない」と言う。ただ唯一、「もう一度、キク(琴奨菊)とやりたかった」と残念がった。

 部屋付き親方として部屋全体を引っ張り上げるのが今後の人生。「その子ができるようになるまで付き合ってあげられるような指導をしたい。どこまでその子たちに向き合えるか」と目指すは熱血親方。関脇正代、幕内豊山ら弟弟子に優勝の夢を託す。

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