トンプソン・ルーク華々しく現役に幕 「心は日本にある」W杯4度出場の鉄人

試合後、場内を一周しスタンドのファンに手を振る近鉄・トンプソン=東京・秩父宮ラグビー場(撮影・開出牧)
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 「ラグビー・トップチャレンジリーグ、近鉄74-0栗田工業」(19日、秩父宮ラグビー場)

 今季限りで引退を表明しているW杯日本代表ロックのトンプソン・ルーク(38)が、現役最後の試合を終えた。2部相当のトップチャレンジリーグでは異例の1万4599人の大観衆の歓声を一身に浴びてフル出場。圧勝で決めた優勝を置き土産に、グラウンドを去った。

 試合後には引退セレモニーが行われた。「16年前から応援してくれた、いままでありがとう。感動した」と挨拶。W杯を振り返って「ちょっと疲れたけどね。日本チームを誇りに思います。日本のみなさんは、素晴らしいファン。ありがとうございました」と感謝の思いを口にした。胴上げで3回宙を舞った。

 ボールを持つたびに「ルーーーク!」というコールが飛んだ。派手さはない。倒れてもすぐに立ち上がり、ボールの元に素早く動き、鋭いタックルを見舞う。いつもの献身的なプレーに、不屈の闘志を込めた。

 60-0で迎えた後半31分の味方のトライ後には、ゴール正面からキッカー役も務めた。大歓声の中、ゴールを決めた。同33分にはトライ寸前までいったが、無情のホイッスル。幻のトライにブーイングが響いた。後半ロスタイムには再度キッカーを務めた。左サイドからの難しい角度からのキックは外れた。これが現役最後のプレーになった。

 「生まれたところじゃないけど、心は関西人。東大阪、めっちゃ好き。いつもありがたい」。ニュージーランド生まれの関西人。「へたくそ」と自重する流ちょう大阪弁を操る。来日は04年。三洋電機で2季プレーして、近鉄に移籍。東大阪での生活は気付けば14年が過ぎていた。

 近鉄時代の07年に日本代表初キャップを飾り、総キャップ数は71。W杯には日本代表初の4大会連続出場を果たし、14試合出場も最多。最年長出場も果たした鉄人だ。

 日本代表の精神的支柱だった。15年W杯、南アフリカ戦。逆転勝利につながった最後のスクラムの前に「歴史、変えるのは誰?」と鼓舞し、史上最大の番狂わせの立役者になった。

 一時は代表引退。それでも代表への思いを捨てきれず、ネリッサ夫人の「本当にやりたいなら、いつも応援している」の声で決意。昨年の4回目のW杯は「記録より、チームが勝つことが大事」と愚直にタックルを繰り返し、史上初の8強に導いた。

 歴史を2度作った男。「僕は日本人。違う顔だけど、日本語あまりうまくないけど、僕の心は日本にある。プレーはチームと国と家族のため」。そう言い続けて、常にグラウンドに立った。

 今後は母国ニュージーランドに帰国。牧場経営する夢がある。愛する家族、愛する大阪、愛する日本のために戦ってきた。“トモさん”の愛称で愛され親しまれてきた男が、現役生活に別れを告げた。

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