陸連 札幌移転に遅すぎた意見表明 瀬古リーダーちらついたモスクワ五輪ボイコット

 日本陸上連盟の強化委員会は5日、都内で東京五輪マラソン、競歩会場の札幌移転が正式決定したことを受けて会見した。MGC設立などに尽力した瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダー(63)らが国際オリンピック委員会(IOC)のトマス・バッハ会長による強行決定を批判した。バッハ会長が札幌案を表明したのは、先月16日。2週間経過し、結論が出た後の遅すぎる意見表明となった。

 この日に至るまで日本陸連としては、立場を示してこなかった。あまりに遅すぎる意見表明だが、瀬古リーダーは「IOCの決定は絶対と聞かされた。陸連としての意見がIOCに悪意としてとらえられたら、“じゃあマラソンなんか外そう”となるのではという思いがあった。ここは抑えようと思った」と説明した。決定する前に抵抗し、IOCの逆鱗に触れれば、マラソン・競歩自体が中止されるのではないかという恐怖心があった。瀬古リーダーには選手として絶頂期だった1980年のモスクワ五輪に政治的理由によるボイコットで出場できなかった経験がある。出られなくなる辛さは誰よりも分かっていた。だからこそ、あえて意見は封印した。

 低迷に陥っていたマラソンを救うべく、リーダーに就任したのは3年前。そこから夢見てきた光景があった。満員の新国立競技場に、日本選手がメダル争いで帰ってくる。55年前と同じように。「前回1964年の東京五輪では円谷幸吉さんが満員の国立に帰ってきて、銅メダルをとった。ああなればと」と、無念さを吐露した。

 ただ、打ちひしがれる中で、選手の声に救われたことも明かした。直前に男子の五輪代表に決定している服部勇馬(トヨタ自動車)と話をする機会があったという。「『瀬古さんのボイコットの時に比べたら、僕らは走れる。幸せです』と。涙が出ました。でも東京で走らせてあげたかった」と、言葉を詰まらせながら話した。

 札幌が決定した以上、強化の責任者として、立ち止まってはいられない。「切り替える。今日からもう札幌、札幌、札幌!今日は札幌ラーメンを食いにいく」と、“瀬古節”で締めくくった。

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