稀勢涙の初V!19年ぶり日本出身横綱誕生確実!幾度の綱とり失敗“怪物”ついに悲願

 「大相撲初場所・14日目」(21日、両国国技館)

 大関稀勢の里が涙の初優勝を飾った。平幕逸ノ城を寄り切って13勝1敗とし、2敗で追っていた横綱白鵬が平幕貴ノ岩に寄り切られたため、14日目で悲願を達成した。30歳6カ月での初優勝は年6場所制となった1958年以降、史上5番目の年長で、新大関から31場所目の初優勝は昭和以降、最も遅い。千秋楽の白鵬戦の勝敗にかかわらず、98年の3代目若乃花以来、19年ぶりとなる日本出身横綱、第72代横綱稀勢の里の誕生が確実になった。

 白鵬の映る頭上モニターに背を向けて、稀勢の里は座っていた。静まる支度部屋に館内の大歓声。付け人から「横綱負けました」と告げられると、表情を変えず一つうなずいた。

 悲願の初優勝が決まった。報道陣に向き直し「ふー」と息を吐いた。祝福に「ありがとうございます」と答えると感情があふれ出た。もうこらえきれない。涙がみるみるたまり、右目からひとしずく、つーっと流れた。

 長かったか?と問われると「うん、まあ。うれしいです」と短い言葉に喜びを込めた。辛酸をなめてきた日々がついに報われた。

 中学卒業のたたき上げは番付を駆け上がった。十両、幕内昇進は貴乃花に次ぐ史上2位の年少。“怪物”が優勝を逃し続けた。

 大関在位31場所での初優勝は史上1位の遅さ。30歳6カ月は史上5位の年長だ。昨年は琴奨菊、豪栄道に先を越され唯一、大関で優勝ゼロ。3度、合計では5回に及ぶ綱とりで、終盤ことごとく失速する屈辱にまみれた。

 一方で69勝を挙げ、初の年間最多勝に輝くなど自信もつけた。この日も逸ノ城に一度はつっかけられたが、自分の流れで立った。左おっつけから左差しの必勝。V争いの重圧にも動じぬ精神力が備わっていた。

 「支えてくれた人に感謝しかない」と稀勢の里は頭を下げる。地元、茨城県牛久市の父・萩原貞彦氏は「下半身が充実。四股、すり足を相当やった。残す余裕がある。負けない相撲は白鵬に近づいた」と、壁を突破したことを感じた。

 格闘家としての英才教育もあった。幼少期、野球、レスリング、ラグビー、さまざまな競技を習わせた。「相撲以外の筋肉が身についた。とっさの時、相撲以外の筋肉を使うから故障が少ない」。今場所は横綱、大関に故障が相次いだが、稀勢の里が30歳を超えて進化できる一因だった。

 11年11月に急逝した先代師匠・鳴戸親方(元横綱隆の里)に捧げる優勝だ。角界のまさに父。厳しい稽古、私生活からすべてを教わった。今場所の朝稽古、筋肉が先代に似てきたと問われると「3分の1の筋肉もないよ」と笑み。稽古場に掲げる師匠の遺影にやっと朗報を届けた。

 師匠と同じ30歳を超えて横綱の可能性は高い。昇進問題を預かる二所ノ関審判部長(元大関若嶋津)は「何よりも優勝したことが大きい」と評価し、横綱昇進を諮る臨時理事会の招集を八角理事長(元横綱北勝海)に要請する意向を示唆。このことにより昇進が確実になった。

 協会の諮問機関、横綱審議委員会(横審)の守屋秀繁委員長(千葉大名誉教授)は「(昇進は)私がというより、日本国民がじゃないですか」と話した。昇進に厳しいノルマを課してきた同委員長は、たとえ13勝2敗でも昇進を認める意向だ。

 稀勢の里は千秋楽、白鵬との一番へ「またあしたしっかり締めて集中してやるだけ」と切り替えた。宿敵を倒す14勝目で、昇進へのダメを押す。

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