錦織、自信取り戻す「銅」 「五輪コラム」

 テニス男子シングルスで錦織圭が日本選手としては96年ぶりのメダルとなる「銅」を獲得した。3位決定戦でラファエル・ナダル(スペイン)をフルセットの末に下した大きな勝利。準決勝での惨敗で自信を失いかけた錦織は、苦手だった「ビッグ4」の一角を崩したことで今後のツアーへの生気を取り戻した。

 ▽気持ちの切り替え

 アンディ・マリー(英国)に準決勝でストレート負けした後、錦織は「気持ちの整理をつけるのが難しかった」と正直に言った。世界ランク2位のマリーには4連敗で通算1勝7敗。「何回も負けている相手に、また勝てなかった」という無念さに打ちひしがれた。世界5位のナダルにもこれまで1勝9敗。乗り越えなければいけない上位選手に2日連続で敗れれば、積み上げて来た自信を喪失しかねないピンチだった。

 気持ちを切り替えて3位決定戦に臨んだ錦織は、故障から回復したナダルをストローク戦で圧倒した。第1セットは6-2で先取。第2セットも5-2と大きくリードしてサービスゲームを迎えた。

 この土壇場でナダルはさすがの粘りを見せた。北京五輪金メダリストでもある元世界1位は鬼気迫る表情で反攻に出て、錦織からミスも誘った。6-6のタイブレークに持ち込んで流れを変え、7-6でセットを奪い返した。

 第2セット終了後のタイムアウトにゆっくりと時間をかけた錦織は、ここでもう一度、メンタル面と戦略を立て直したのだろう。第3セットは安定したストロークが戻り、切れ味鋭いショットも連発した。第4ゲームで相手サーブをブレークすると、今度はこのリードを最後まで守り切った。

 ▽勝つ経験値

 五輪で錦織を支援した日本テニス協会のサポート部隊はスタンドで狂喜していた。なにしろ1920年アントワープ大会男子シングルス、ダブルスで銀メダルを獲得して以来となるメダルである。

 錦織は、メダル以上の価値をナダル相手の勝利に見いだしているようだった。第1、3セットのテニスには、本来の持ち味が十分に発揮されていた。「銅メダルもうれしいが、タフな試合をきちんと競り合って勝てた。その経験値(を得たこと)がうれしい」

 五輪を終えると生存競争が激しいツアーに戻る。今月29日からは4大大会今季最終戦の全米オープンが始まる。14年に準優勝した相性のいい大会で、9連敗中の世界1位ノバク・ジョコビッチ(セルビア)やマリーらランク上位選手に再挑戦する。(荻田則夫)

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