愛知に異色の僧侶兼ライダー

 愛知県豊田市の郊外に僧侶兼ライダーという異色の選手がいる。根引山妙楽寺(浄土真宗)の住職鈴木政彦さん(52)だ。自然の地形を使ってライディング技術を競うトライアル競技のベテランで、寺の境内に約5万平方メートルのトライアル場を造営し、地方選手権などに施設を提供している。法事などで忙殺され、10年近く公式戦を控えてきたが、来季は久しぶりの競技復帰を検討している。

 オートバイ競技も仏の道につながっている。観音像が見守る境内の一画に広がるトライアル場。約30年前に自ら施設を造営した鈴木住職が見事なライディング技術を披露した。

 「トライアルがうまくなるのも精進が大事と私は言っています。自分との闘いですからね」。トライアルは岩場など自然の地形を使ったコースを、地面に足をつくことなく走り抜ける競技。日本では2000年からツインリンクもてぎ(栃木)で世界選手権が開催されるようになり、エンジンなどの駆動力を使ったスポーツでは最も五輪種目に近いともいわれる。

 鈴木住職は小学6年で出家得度。高校卒業後に京都で修行し、成人してから先代住職の祖母から寺を継いだ。トライアルに興味を抱いたのもそのころで1988、89年とノービスクラスで優勝。同じ時期にトライアル場も日本モーターサイクルスポーツ協会のコース認証を受け、現在は中部選手権を開催している。

 施設に決められた使用料はない。その代わりにお布施を受ける。境内の休憩所にある招き猫の貯金箱に投じる仕組みだ。「あくまでお志。トライアルは仲間意識が強く、清掃して帰られる方もいます。騒音もなく、自然を大きく破壊することもありません」と言う。

 寺は200軒以上の檀家(だんか)を持ち、特に週末は法事で忙殺される。そのため10年近く公式戦から遠ざかっており、「トライアルは年齢に関係なく楽しめる。できれば来年はどこかの大会に出てみたいですね」。久々の競技復帰に意欲的だ。普段は法衣姿で仏門に精進する身だが、ひとたびバイクにまたがれば、熱い血がたぎる。

 ▼トライアル 規定時間内にセクションと呼ばれる障害物のある区間を走り抜く競技。足がつくと減点となる。日本では第1回全日本選手権が1973年に開催。2004年の世界選手権で藤波貴久(三重県四日市市出身)が日本人初の年間チャンピオンに輝いた。オートバイのほかに自転車の競技もある。

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