命の洗濯になる湖

 【Myリポート鈴木健之 森田昌宏】

 魚たち 跳んで見上げる 富士の夏

 早朝、釣り支度の隣人が口にした句だ。日の出を待ちかねたようにもじるヘラブナ。富士山の西側に位置する田貫湖(たぬきこ)=静岡県富士宮市。ダム化される前の名は「狸(たぬき)沼」。逆さ富士の見事さなど、富士五湖に勝るとも劣らない。今年は減水が続き釣果はいまいちだが、仮に貧果に終わっても景観が救ってくれる。年に一度は訪ねたくなる、命の洗濯になる湖。

 1周約4キロ、水深1~5・5メートル、管理は市(舟釣り禁止)。以前は野釣りに近いのに四季、束釣りが出て話題になったが、最近は大型の出現率が高く「霊峰を前にした釣りだから、その方が似合っている」との声が大きくなり始めている。

 7月第1週にかけての釣果は平均20匹前後。ポイントは東、南の一部を除いて全域。地元のクラブのメンバーに話を聞くと「型は中、小だが数ではエン堤の護岸や展望台前など。型では桜並木から1本杉にかけて。特に真ん中の前岩の出っ張りがいい」とのこと。長く続いた減水もどうにか治まり、釣果は徐々に上向いている様子。

 試釣は展望台前。富士山は機嫌が悪く雲の帽子。竿16尺でタチは約3・5メートル。エサはグルテンセット。6人ほどとの競合で、底狙いは私一人。宙釣りが習慣化されている釣り場だが、魚の学習能力も進んでおり、空ツンやスレアタリが出やすい。ロスを恐れずどんな結果が出るかを、楽しみにする。

 が、結果が出たのは開始から4時間近くたってから。長くモヤつくだけで、決めアタリが出ない。打開策として竿を18尺に。エサを両グル(新べらグルテン底+いもグルに微量の新ペレ)に変えてみる。なかばやけっぱちになっていたのだが…風向きが正面からの南風に変わり釣り難くなったが、釣況は逆に上向き始める。タナは両ベタ~下バリトントン。アタリの大半は食い上げ。

 15時の納竿で数は8匹。むろん数では宙釣りに大差をつけられる。ただ周りからは、うらやましがられる。「いい型ばかり、オール35センチ以上だったでしょう」。そのとお~り40センチ超が1匹入る。

 ちなみにこの日、同行のメンバーは大型の宝庫、前岩に。それによると先着者の隣人が短竿の宙釣りで大型が出ているという。「そんな訳ねえだろって18尺出したら放流ベラばかり。短竿にしたが、もうリズムに乗り切れなくて。大型は岸寄りを回遊しているんだよ」

 釣りというのは本当に何十年やっても分からない。管理事務所では「今はまとまった雨が欲しい…」と話していた。

 〈ガイド〉入漁料=700円(釣り台必携)▽場所=市内猪之頭▽問い合わせ=管理所TEL0544・52・0015

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