アマゴが躍る
【Myリポート・時田眞吉】 静岡県東伊豆町・大川川
伊豆の代表的な河川としては、狩野川と河津川が有名だ。この二つの川ほど水量、川幅がなくてもアマゴの生息する渓(たに)は点在する。そして、とても河口部からは想像もつかないすばらしい渓もある。
そんな渓のひとつが、東伊豆町の大川温泉を流れる大川川だ。増水時以外では国道135号上にかかる橋をうっかり素通りしてしまうほど細い流れを見せる。しかし、遡行(そこう)するにつれ大ブチや水深のある瀬が交互に現れて本格的な渓相が現れる。落差があるためか、増水から平水に戻るのも早い川でもある。
この大川川は天然アマゴの宝庫。管轄漁協がなく、これまで有志による放流がほそぼそと行われていたものの、近ごろでは大川区が保護を目的に放流を行っている。アマゴは河口から狙うことができる。河口近くは小エン堤の林立する渓相で数は望めない。しかし、上流から落ちてきたアマゴが育ったのか、時折大物が竿を絞り込むことがある。雨後の増水時であれば一発大物狙いで入渓してみたい。
伊豆急行の陸橋に続いて大川橋が現れる。この付近が下流部での入渓点となっているが、相変わらず小エン堤が連続する。大川橋の上流に3メートルほどのエン堤があり、それを越すとすぐに橋が現れる。橋下にあるエン堤のフチには良型のアマゴが潜んでいる。
エン堤を越すと小エン堤が3~4カ所と続くが、いずれのエン堤下も水深があり好ポイント。このエン堤を過ぎると大川川中流部最大の好エリアとなる。大小の岩がゴロゴロと続くアップダウンの激しい流れで、竹の沢公園付近まで釣り上がれる。
竹の沢公園までは川沿いに道が沿うため、所々に入渓点があるが、公園を過ぎると上流にかかる参拝橋までは川が離れてしまうので入渓することができなくなる。それだけに竿抜けも多く、落差のある小フチや水深のある瀬ではアマゴのアタリが続くようになる。
参拝橋の手前に大川川最大で最後となる10メートルほどのエン堤が姿を現す。このエン堤にはフチはないものの、真ん中に大穴があいていて常にアマゴが入っているので、特に増水時には見逃せない。
参拝橋より上流は向井田川と川の名も変わり、数年前からアマゴの保護を目的とした禁漁区域となっているので入渓することはできない。
この川は東伊豆町と大川区が管理していて漁業組合がないので、入漁料は必要としないが、それだけに15センチ以下のアマゴは必ずリリースを心掛けてほしい。なお、エサとなる川虫の採取は難しい。増水時であればキジで問題ないが、平水時はブドウ虫などを持参したい。