元愛媛・高原 夢を思い出した3年間「やりきった」人生の宝物を胸に教員の道へ
【元愛媛・高原和弘投手】=文・高田博史
高原和弘にとってアイランドリーグとは、夢を思い出させてくれた場所だ。
大学卒業後の進路に迷っていたころ、ずっと心に引っ掛かっていたものに気付く。小学生のころ描いた「プロ野球選手になりたい」という夢だ。やらないで後悔することだけはしたくないと、アイランドリーグに飛び込んだ。
「悔しさとふがいなさを常に感じた3年間でしたけど、いろんな人に支えられていた。感謝ですね」
セットアッパーとしてマウンドに登りながら「絶対にNPBに行って周りを見返してやる」という気持ちだけは失わなかった。自信をもってそう言える。
だが、肩に鈍い痛みが走ったのはリーグ中断期間中の6月、台湾チームとの交流戦でのことだった。練習生から選手登録された8月20日、再び登ったマウンドで、また痛みが走る。
痛み止めを飲み、翌日もマウンドに登った。しかし、全力で投げた球は、21歳のとき記録した数字より15キロ遅い126キロしか出ていなかった。
これ以上いたら、球団に迷惑を掛けてしまう。8月31日、5失点を喫した宇和島での試合後、自ら「退団させてください」と伝えている。球団からはシーズン終了までチームをサポートすることを認められ、総合優勝の瞬間を見届けた。
「やり切った。やれることはやった。ダメだったんだから仕方がないという気持ちはあったので、意外とスッキリしてました」
正式に退団が決まり、両親に「ありがとうございました」と伝えた。「お疲れさま」と言ってもらえたことが、とてもうれしかった。
「視野を広くする。考え方を変えてみる。そういうことが現状打破につながる。教師としてそういうことを生徒たちに教えたい」
1月6日から故郷・埼玉にある特別支援学校で教員を目指す。「教育の原点」と言われる場所で、指導力を身に付けたいと思ったからだ。7月に行われる教員採用試験に挑む。
「大変だとは思いますけど、2017シーズンだと思って頑張ります」
愛媛での3年間が、人生で忘れられない宝物になった。