元徳島の宮下 ファンから愛されたかけがえのない3年間

 【元徳島・宮下直季捕手&内野手】=文・高田博史

 取材当日の宮下直季は、春季キャンプでお世話になった海陽町「まぜのおか」のスタッフに、最後のあいさつをした帰りだった。

 「あいさつ回りに行くじゃないですか。まあまあ泣いてます(笑)。泣かされてます」

 以前「シーズンが終わったら、一緒に酒でも飲んで泊まっていきなよ」と誘ってくれていた。果たせなかったことが残念でならない。

 こんなエピソードがある。スタンドからヤジを飛ばすので有名なおばさんがいる。それだけ熱狂的でありがたいファンなのだが、不思議と宮下のことだけは素直に応援してくれる。チームメートから「どうやって味方につけたの?」と尋ねられても、特に心当たりがない。

 ファンはお金を払って試合を見に来てくれている。どんなときでも明るく、爽やかに-。プロ野球選手だった父・文夫さん(元阪急)が言った「ファンは本当に大事にしろ」という言葉を、いつも心掛けていただけだ。

 「正直、自分が出てないときとか、悔しいときとかあったんですけど。それでも僕に声を掛けてくれるってことは、応援してくれてるってことじゃないですか」

 ファンから「宮下君は応援したくなる選手」と言われたことが誇りだった。

 今季受けた17死球はリーグ断トツの数字だ。入団1年目、内角への球を避けてストライクになったことがある。試合後、武藤孝司コーチ(当時)から「9番が内角を避けるなんてあり得ない」と言われた。当たってでも出塁し、1番に回す。そう強く意識したのはこのときからである。だから、常にホームベースギリギリのところに立っていた。

 今年がラスト勝負。ダメなら辞める。そんな覚悟で3年目に臨んでいた。

 「ファンもいますし、自分のことだけじゃない。この徳島で3年間、すごく成長させてもらったし、僕自身、うまくなりたい、プロに行きたいという思いもありました。『頑張れよ!』って後押しを感じたので。来て良かったです」

 ブルペン捕手としてDeNAに入団することが決まっている。愛された徳島を去り、NPBの世界へ。最後まで笑顔のまま、爽やかに。

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