韓国プロ野球のドラフト事情 かつてに比べレベル低下の声も…

 8月22日、韓国でドラフト会議が開催された。韓国のドラフトシステムは、まず7月に各球団の縁故地の高校出身者を対象に、1名指名する『1次ドラフト』と、完全ウェーバーで指名していく『2次ドラフト』の2方式を採っている。1次は以前は『優先ドラフト』と称された時期もあるが、基本的に各球団が縁故地出身選手を指名する方法を維持している。これは韓国の野球界が日本以上に地域との密着を計り、また縁故地出身選手が直接、観客動員にも繋がっていることに由来している。

 2回に分けるようになったのには、また別の理由がある。韓国球界の関係者が言う。「以前は韓国でもシーズンオフに指名会議を開催している時期がありました。しかし11月頃だと、優秀な選手がメジャー球団と先に契約してしまうケースが多発したのです。そこで先手を打つ意味で、夏に行うようになったのです」

 韓国アマ選手のメジャー進出は、1994年の朴賛浩を皮切りに、ピークとなった2000年前後には、100万ドルレベルの契約金で“流出”していく選手も少なくなかった。

 ただそれも近年は、かつてのような勢いはない。韓国球団の契約金が高くなるなど、国内での条件が良くなったことも大きい。しかしなによりは「韓国人選手のレベルが、かつてに比べて下がってきている」(メジャー球団のアジア担当スカウト)というのだ。同スカウトはこう続けた。「10年前なら素材として十分に魅力的な選手が多かった。少々、粗っぽくても投打ともパワフルな高校生が幾人もいたが、最近は少ない。メジャーの契約金で評価するなら、良くて20万ドル程度。しかしその額では彼らも来ようとはしない」

 レベルの低下というと表現はやや扇情的だが、実際、韓国内のプロでも高校卒はともかく、大卒で即戦力、あるいは1軍にレギュラー定着するレベルの選手は、確かに減っている。「野手なら大卒で13年にNCへ入団した羅成範外野手(26歳)あたり。投手となると高校からSK入りした金廣鉉(27歳)あたりまで遡らないと見あたらない」(韓国球界関係者)。金廣鉉は韓国を代表する左腕だが、プロ入りは2007年。それ以後で、突出した選手となると……。

 無論、プロのレベルが上がっていることも要因ではあるが、前述の関係者によれば「土壌である高校野球のあり方にも問題がある」と言うのだ。例えば学校数。現在、連盟に所属し本格的に野球をしている学校は、わずか68校に過ぎない。

 関係者は言う。「野球部の運営費は、学校から出ておらず父母が寄付の形で賄っているケースがほとんどなのです」。その中には、監督やコーチの報酬も含まれる、という。

「例えばプロ出身のコーチだと、部員ひとりあたりで月に70万ウォン(約7万円)から100万ウォン(約10万円)を出し合わなければなりません。それとは別に、1ヶ月70万ウォンの部費も必要です。単純計算でも、他の雑費を含めれば年間で2000万ウォン(200万円)以上はかかるのです」

 一般的に、韓国では「スポーツ選手は親が金持ちでなければなれない」という言われ方をするが、まさに高校野球はその典型と言える。だからこそ、親としては子供をメジャー球団と契約させ、より高額な契約金に期待するわけだが、近年は韓国も深刻な不況で、かつてのように子供に投資がしにくくなっている。メジャー球団のスカウトが言う。「日本なら、かりに親が貧しくても本人に豊かなセンスがあれば、特待生など特例で高校に入学し、野球をする余地があります。しかし韓国にはない」

 そうした環境がプロ野球のレベルにも、少なからず影響を与えているという見方も出来るわけだ。今年もドラフトで指名された選手たち。この中からどれだけ将来の韓国球界を担う存在が登場するか。そのときを待ちたい。

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