メジャー志向の韓国左腕、その評価は…

 先週、韓国SKの金広鉉投手(キム・グァンヒョン=27歳)に関するニュースが報じられた。なんでも彼の代理人が「金広鉉は今オフ、FA件を行使してメジャー進出を希望している」という趣旨の発言をしたというのだ。金広鉉といえば日本の複数球団も獲得調査にあたっているサウスポーである。

 金広鉉の場合、2014年オフにポスティングシステムを利用してメジャー進出を試みたものの、最高入札額200万ドルを提示したサンディエゴ・パドレスとの交渉がまとまらず、見送った経緯がある。パドレス側からの条件が悪かったと見られ、結局、SKに残留し今オフのFAを待った。

 今季の金広鉉は12試合に登板して5勝6敗、防御率3・24。数字上は特筆すべきものは感じられないが、球速は151キロまで出し、韓国の球界関係者からも「新人の頃の躍動感こそないが、安定感含め好調。少なくとも去年よりは良くなっている」とのこと。ただ具体的な内容を見ると、率直に言って物足りなさを感じる。

 たしかにストレートは150キロ台を出してはいるものの、基本は主武器だったタテに落ちるスライダーに、最近はカーブ、チェンジアップなどを多用するようになった。カウント3ボール2ストライクからでもチェンジアップを選択する場面も多いから、自信もあるのだろう。しかしそもそも球種を増やしたのは先発として完投するだけのペース配分(いわば大人のピッチング)もあるだろうが、若い頃のような打者の手元でのキレがなくなり、ストレートとタテスラだけで勝負できなくなったからだ。

 金広鉉の全盛期は08年、北京五輪の頃だろうか。韓国の金メダル獲得に大きく貢献した。当時はMAX155キロでも、数字以上の伸びがあり、鋭いキレがあった。身体を目一杯使う躍動感。マウンドで喜怒哀楽を出すことには賛否もあったが、しかし彼はそれだけピッチングを満喫している。そんな見る者の心を躍らせるサウスポーだった。10年には17勝を挙げ2度目のタイトルも獲得した。08年といえば彼が高卒後、プロ入り2年目、二十歳の頃。その頃を全盛期と呼ぶのは、抵抗もある。その後、彼は肩痛との戦いを余儀なくされたためだ。

 棘上筋(きょくじょうきん)、関節唇に傷が見つかり、日本と往復しながら数ヶ月にわたっての治療。11年には8勝を挙げ復活したようには見えたが、当時のことを思えば、よくここまで復調してきたものだと思う。

 そんな金廣鉉だけに、夢を実現させて欲しいとも思うが、現実は厳しい。

 ごく最近、金廣鉉のピッチングを見たというメジャーのアジア担当スカウトによれば、「先発で獲得に名乗りをあげるチームはどれだけあるだろう」との評価だ。

 「個人的な評価だが」と前置きして、このスカウトは球種を例に説明してくれた。

 まずストレートとカットだけなら、先発でも通用するだけのものを持っている。しかしスライダー、チェンジアップ、カーブはメジャーレベルからすれば平均以下の精度。とすると、打者も3巡目あたりでは十分に対応できてしまう。

 しかしストレートとカットはいい。つまり「左の中継ぎスペシャリスト的な使い方だと、彼の持ち味は十分に発揮できるのではないか」という。無論、こうした評価はチームの戦力事情によって変わってくる。左の先発が欲しいチームなら評価も上がる。「ただ能力的な評価は、他チームもそれほど大きく変わらないのではないか」。このスカウトはそう言った。

 必然的に、提示する金額も低く抑えられる可能性がある。14年オフの提示額は明らかになっていないが、「今でも70万ドルから80万ドルくらいが相場では」(同スカウト)。そうなると、あとは本人のメジャーへの“本気度”次第ということになる。金銭度外視してメジャーに行きたいかどうか。実際、李大浩(イ・デホ=マリナーズ)ら野手でも低評価を呑んで渡り、実力でポジションを掴んでいる韓国人メジャーリーガーもいるのだから。

 では彼が日本を選択する可能性はどうか?今のところ、その余地はないように思える。本人は強いメジャー志向であり、SK球団も引き留めるには最大の金額を用意するはずだ。現在、彼の年俸は8億5千万ウォン(約8500万円)。これが引き留めとなれば、契約金、出来高含め、複数年で100億ウォン(約10億円)を超えることは必至だ。それだけの金を投じて手を伸ばす日本球団はまずない。

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