台湾でのキャンプがもたらすメリット

 韓国プロチームが沖縄や宮崎に訪れ、汗しているのは、もう野球ファンなら誰もが知っていること。だが近年は台湾もキャンプ花盛りだ。別表の通り今年、台湾ではプロ4チームに加え韓国の8チームがキャンプ地に台湾を選び、訓練に明け暮れていた(中国チームを含めれば、10チーム以上となる)。

 韓国チームといっても、こちらは2軍(韓国ではフューチャーズリーグと称している)。2軍まで海外キャンプを張っていると聞けば、多くの人は「韓国のプロ野球チームは金持ちだな」と感想を漏らす。確かに韓国はキャンプ費用に多額の投資をしている。1軍がアリゾナで1次を過ごし、2次に実戦練習を求めて沖縄に、一方、2軍は台湾で、となればかなりの経費を要する。以前は厳冬の韓国内で過ごしていることも多かった(今でも数球団はその寒さに耐えているのだが)。しかし選手育成という本来の目的からして、資金難を理由に2軍をおざなりにもできない。

 そんな考えが球団にも浸透し、この4、5年前から暖かな場所を求めて、まさに渡り鳥のように2月を過ごすようになった。チームによっては中国大陸やタイ、フィリピンなどでも試みたが、施設の不備で撤退。そこに台湾からの誘致が盛んとなり、多くのチームが渡るようになった。

 台湾まで行ってキャンプをするのは、無論、温暖な地でのトレーニングが主眼にあるが、同時に実戦機会に恵まれていることも大きい。そもそも台湾では台湾のプロチームがキャンプ(春季訓練)をしている。当然のことだが、誘致できるほど暖かい台湾チームは海外に出る必要はない。そんな台湾チームといくらでも練習試合ができる。さらには同じ韓国の2軍チームがそろって台湾入りし始めたことで、現地で2軍チーム同士の試合もたやすくなった。

 これは迎える側の台湾チームにとっても、意味あることだった。通常、キャンプから開幕までおよそ2カ月のあいだに、台湾チームも20試合程度の練習試合、オープン戦を行う。ただ台湾のプロ野球は現在4チーム。マンネリ化を防ごうと大学などとの対外試合も行うが、やはり士気は上がらない。

 その点、2軍といえども海外のチームとの練習試合は、新鮮だ。また「常日頃、対戦していない分、知らない相手とゲームができることは、選手にとっても緊張感が生まれるし、感覚を研ぎ澄ませることになる」(台湾球界関係者)というのだ。作戦面でチェックしたいことも、開幕後、すぐ対戦する同一リーグのチームではしにくいが、韓国チーム相手なら気にせずできる。

 また台湾チームにとって、より意味があることが「他国のレベルの高さ、意識」を感じられることだ。

 2軍とはいえ宿舎にしているホテルは台湾チームが公式戦中でもなかなか使えないクラスだったりする。昼、夜の食事の充実といった栄養面。またキャンプで必要とするスタッフの支援も、台湾の1軍より韓国の2軍の方が勝っていたりする。

 台湾球界関係者は続ける。「正直言って、自分たちが使えないクラスのホテルに、なんで韓国の2軍が入っているのか。それだけお金のかけ方が違うのか。不満にも思います。食事もそうです。でもそうした環境面も、球団フロントが韓国チームと関わることで知り、考え直してくれるきっかけになるなら意味もある」

 また別の関係者は練習への取り組み方など、野球に対する姿勢も、連日の韓国チームと対戦で感じられる良さだという。

 「代表チームは他国と互して戦えても、単一チームとなるとまだ選手の技術、意識も高いとはいえない。でも“井の中の蛙”では目にする機会も少ない。その点、キャンプで来る韓国チームとの試合を通して、自分たちの至らない部分を知ることができる機会になる」

 さらには複数のチームを見ることで、韓国チーム同士の競争心、ライバル心も垣間見ることができるという。そうした点も台湾チームには欠けている、という。このような“発見”は、キャンプという短期間に、複数の異なったチームと関わる中で感じられるメリット。それで台湾の選手が、球団幹部が、少しでも刺激を受け、時には反省もし、自らを高めていってくれれば。台湾球界にとっても、意味深いキャンプ誘致となる。日本の2軍も、こうした台湾でのキャンプに“参加”してみてはどうだろう。得るものは決して少なくないと思うが。

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