金足農・吉田、奪三振ショー また2桁!13Kスターの輝き本物
「第100回全国高校野球選手権・2回戦、金足農6-3大垣日大」(14日、甲子園球場)
みちのくのドクターKが、また奪三振ショーだ。金足農(秋田)のプロ注目右腕・吉田輝星投手(3年)が、1回戦・鹿児島実戦の14奪三振に続き、13三振を奪い2戦連続2桁奪三振をマーク。154球を投げ抜いた。23年ぶりの16強進出で、次戦は強豪横浜と対戦。桑田や清原を擁したPL学園を追い詰めた84年の4強超えへ、負けられない戦いが続く。
おのずとギアが入った。「同点が続いていて疲れていたけど、大友のホームランで目が覚めました」。同点の八回。大友朝陽外野手(3年)のソロで勝ち越すと、その裏のマウンドに上がった吉田に迷いはなかった。
覚醒したエースはこん身の力を繰り出し、3者連続で見逃し三振。「狙い通り。九回裏まであるので、相手に嫌なイメージを植え付けたかった」。したたかな右腕は、九回にもこの日最速の149キロを3球続け、たくましくねじ伏せた。
「3段変速」の直球を場面に応じて自在に操るクレバーさは、この日も光った。直球で押した序盤から、中盤は「ストレートが狙われていると感じた」と、あえて130キロ台に抑えた直球を見せ球にし、変化球主体にチェンジ。そしてハイライトでは真骨頂を余すことなく見せつけた。この役者ぶりは、ただ者ではない。
2試合で計27K。この日、13奪三振のうち9個が見逃し三振だ。打者が最も手を焼くのはホップする直球。「下から伸びてくる球筋で、低めのボール球かと思ったら浮き上がってくる」と、女房役の菊地亮太捕手(3年)すら捕球に苦心してきた。その球の力強さに、月に1度はミットのひもを替えなくてはならないほどだった。
お手本にする投手は、楽天・則本。体の使い方を参考にしているうち、くしくも代名詞の奪三振、闘志を前面に押し出す投球スタイルまで似てきた。負けん気の強さも折り紙付きだ。大阪桐蔭・柿木が151キロを計測したことに触れ、「自分も負けていられない」とライバル心をむき出しにした。
07年夏に敗れた大垣日大にリベンジを果たした。同校にとって春夏通算10勝目で95年夏以来23年ぶりの16強進出。桑田、清原のKKコンビを擁したPL学園を準決勝で追い詰めた84年以来の躍進も見えてきたが、吉田は頂だけを見ている。
ベンチメンバーは全員が県内出身者。「自分たちの目標は、東北に初めての優勝旗を持ち帰ること」。100回目の夏。新たに球史を切り開くだけの存在感が、芽生えてきた。