創志学園・秋久、夏こそ祖父・元阪神の上田二朗氏が投げたあのマウンドへ
「選抜高校野球・1回戦、福岡大大濠6-3創志学園」(22日、甲子園球場)
四回から肩はつくっていた。出番を待ちわびた。それでも、あの場所には立てなかった。「まだ(甲子園に)呼ばれていないんだと思った」。創志学園(岡山)・秋久大翔投手(2年)はそう言って唇をかんだ。
名の「大翔」は「タイガ」と読む。聖地のマウンドは、猛虎の血が流れる右腕にとってさらに特別な場所だ。母方の祖父は華麗なアンダースローでファンを魅了した元阪神投手の上田二朗氏(69)。1973年に22勝を挙げるなど虎投の柱だった祖父を「王さんや長嶋さんと対戦したすごい人」と尊敬してきた。
中学までは年に数回会うたびに指導を仰いだ。「努力はうそをつかない」と教えられた。小学5年の頃には制球難で捕手にコンバート。しかし、投手への思いは捨てられず、常に不利なカウントを想定する投球練習で集中力を磨いた。中学2年で投手に復帰した。
右のスリークオーター。今では祖父と同じ制球力を持ち味にする。帽子のつばには「おじいちゃんがサインに入れている」という「氣」の文字。誰もが認めるきまじめさで、1年でベンチ入りを果たしたが「自分には何か足りないものがある」と、初めての甲子園が教えてくれた。「夏にはエースになってやるという気持ちで練習したい」。おじいちゃんが見た、あのマウンドからの景色を見るまで絶対にくじけない。