小豆島、選抜見据える「三十四の瞳」

 高校野球の秋季香川県大会で初優勝を飾った小豆島が、24日に開幕する秋の四国大会(徳島)に初挑戦する。来春センバツ出場校選考の重要な資料となる大会。離島のハンディを抱え、2年後には土庄との学校統合を控える中、全員が小豆島出身の17人の部員はモットーの「Enjoy Baseball(エンジョイ・ベースボール)」で島悲願の甲子園出場を目指す。

 目の前に寒霞渓の美しい山並みが広がるグラウンド。四国大会に向けて練習に励む小豆島ナインの声が明るく響いている。

 「島のみなさんが喜んでくれました。一戦必勝の結果で優勝できたので、四国大会でもまず1勝したいですね」。17人の動きを見守りながら、就任7年目の杉吉勇輝監督(32)は目を細めた。

 初優勝を果たした秋の県大会。全5試合を完投したエース左腕・長谷川大矩投手(2年)の粘り強い投球が光った。チーム打率は・241。安打数は少なくてもチャンスを確実にものにして、尽誠学園、高松商など強豪校を次々に破った。

 チームのモットーは「エンジョイ・ベースボール」。杉吉監督が母校・慶大野球部の理念を継承して08年の就任時に掲げたものだ。

 同監督は丸亀高で2度甲子園に出場し、慶大卒業後は大手都市銀行に就職。しかし高校野球の指導者になる夢を捨て切れず、退職して教員となった異色の経歴を持つ。

 自主性を重んじる指導スタイル。日々の練習メニューは選手たちが考案する。ミーティングも選手主導で、監督は時折、助言を挟む程度。「丸刈り頭」も強制していない。

 17人の部員は全員が小豆島出身。幼少期から一緒にプレーしていて結束は強い。主将の樋本尚也内野手(2年)は「自分たちで考え、自分たちで解決する。厳しく声をかけ合いながら練習を楽しむ。それがエンジョイ・ベースボール」と力を込めた。

 ただ、離島の野球環境は厳しさを増す一方だ。最大の悩みは部員不足。島の子供人口は年々減り続けており、他部から部員をレンタルして大会に出ることも珍しくない。

 小豆島ナインは月に1回、地元の小学生を集めて野球教室を開いている。これも島の野球人口を増やすための取り組みだ。丸刈り頭にしないのも「部員を増やす目的もある」と杉吉監督は話す。

 移動の不便さも離島のハンディの一つ。週末はほとんど、フェリーに乗って島外に練習試合に出向く。時間とお金がかかるため、遠方のチームとは試合が組みにくい。

 ただ、どんな困難も「エンジョイ」するのが小豆島ナインの強さだ。フェリーの中の1時間はミーティングに利用。特に帰りの船室は試合の反省点を洗い出し、翌日からの練習に生かすための貴重な場となる。

 生徒数の減少により、2年後の春には島内のもう一つの高校、土庄との学校統合が控えている。その前につかんだ四国切符。島民の期待は大きい。

 「相手はどこも自分たちより強いと思う。勝負を楽しみたい」とエース長谷川。幼なじみの4番・植松裕貴捕手(2年)は「長谷川の良さを引き出して、まずは初戦の相手に勝つことだけを考えたい」と意気込んだ。島悲願の甲子園出場がかかる大舞台。17人は期待と重圧を背負いながら「エンジョイ・ベースボール」を貫く。

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