元ロッテ清水氏のNZでの挑戦【後編】

 現役を引退し、14年からニュージーランド野球連盟のGM補佐に就任した元ロッテ・清水直行氏。彼が思い描く「野球振興」は、日本、ニュージーランド両国の企業や政府とも連携した新たな形へと広がりを見せている。

   ◇  ◇   

 「ニュージーランドが強くなるという結果は、どちらかというと横に付いてきてもらいたいことなんです」と清水氏は話す。強化は重要だが、基盤が作られていなければ結果に伴う熱も一過性のもので終わる。現在、特に力を注いでいるのがニュージーランドと日本の子供たちの交流だ。

 「ニュージーランドの12歳、15歳以下の子供たちと日本の子供たちをたくさん交流させたいですね。日本の練習方法とか、いろんなものを学んでほしいと。そういう橋渡しをしたいと思っています」

 ニュージーランドでは大学生以上の選手は海外でプレーすることが多い。国内で主に見ることができるのは高校生以下の世代。清水氏は「この世代を増やして大事にしたい」と話すが、WBSCなどが主催する国際大会へは旅費などの負担も大きく、思うように参加できないのが実情だ。

 日本の子供たちとの交流はニュージーランドの子供たちが高いレベルの野球に触れ、また日本の子供たちも海外へ視野を広げることができる利点がある。

 14年からはニュージーランド政府が主催し、英語教育とスポーツを目的とした留学制度「ゲーム・オン・イングリッシュ」が立ち上げられたが、現行のラグビーだけでなく野球も加えられるかという議論も、清水氏の働きかけで始まっている。

 また、ロッテ時代の本拠地である千葉県や旅行会社などと連携し、ニュージーランドの子供たちの、日本への短期留学を実現させる方法も模索している。

 その活動は、こちらが想像したものとは違った。約3カ月ごとに日本へ帰国して各企業や千葉県庁などに足を運び頭を下げる。そして折に触れ世界の野球事情を発信する。突き動かすのは、やはり日本野球への危機感だ。

 「危機感を持っている人はいて、いろんな発想もあると思う。例えばニュージーランド、オーストラリア、南アフリカでやっている『スーパーラグビー』。16年から日本も国のチームとして参戦しますが、相当な移動距離ですが、遠征もしてリーグが成立している。この形をアジアでもできるのではという気がするんです。野球もドメスティックなスポーツでいるのか、変わっていくのか。そういう時期に来ている。日本の野球を外に出して、どれだけ(世界の目を)野球に向けさせるか。それが僕の仕事かなと思っています」

 いまだ「野球振興」に明確な答えはないが「人がやっていないことをやる意義は、すごくあるなと思っています。日本の野球も遠い先のことを考えて、1歩踏み出すきっかけになってもらいたい。そう思うんです」と清水氏。切り開いた小さな道。だが、その背中に多くの人が続けば世界へつながる道となる。清水直行氏の挑戦に、そんな期待感を抱いた。(デイリースポーツ・中田康博)

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