ロッテ・田中“原点回帰”で巻き返しだ

 原点に戻る-。ロッテのドラフト2位・田中英祐投手(23)=京大=が、フレッシュオールスター(16日、倉敷)に選出された。右肘の張りで、6月29日のユニバーシアード壮行試合・侍ジャパン大学日本代表-NPB選抜への出場を回避したが、幸い軽症ということもあり、順調に回復。久しぶりの注目の舞台で、自身の最大の魅力である腕の振りを取り戻し、後半戦での飛躍のきっかけとする。

 苦しみ、悩んだ。4月29日・西武戦で大観衆の中で1軍デビューを果たしたが、結果を残せず2軍降格。初めて味わう苦い経験に打ちひしがれた。そして、制球、体の開きなど、多くの宿題を抱えた。元来、負けず嫌いな性格で人一倍、真摯(しんし)に考える力を持っている右腕だ。それらの修正点に対し、ひたむきに取り組んだが、試合になるとそれができず結果が出ない。その繰り返しだった。メンタル的にも技術的にも自信を失いかけたころ、疲労も重なり、右肘の張りも発症した。

 ボールを握らなかった期間、田中は川越2軍投手コーチと話し合う中で、大学時代と現在の投球のビデオを見比べた。かつての自らの姿と現在との明らかな違い。それは腕の振りだった。

 田中といえば、その思い切りの良い腕の振りこそが、大きな武器だった。だが、「課題を直そうとするうちに、腕が以前よりも振れなくなり、彼の良いところが消えてしまっていた」と川越コーチ。体の開きや、投球時に頭がブレて帽子が飛ぶクセ。プロ入りし、1軍マウンドも経験した中で、それらを修正していこうとすると同時に、田中の最大の持ち味が失われていた。

 「もう一度、ここに戻ろう」。同コーチとの対話の中で、今後の方針が見えた。投球時に帽子が飛んでしまう頭のブレでさえも、将来的に直す必要はあるものの、長所の一連の動きに含まれるということで、まず、原点回帰をテーマに設定。方向性をはっきりと見いだし、再出発することになった。

 右肘の状態も癒え、フレッシュ球宴出場が決まった3日、田中はロッテ浦和球場で故障後初めてブルペンに入り、約50球を投げ込んだ。そこに右肘に張りを訴え、沈みきった表情でNPB選抜を辞退した右腕の姿はなかった。「頑張ります」と白い歯を見せた田中は、心なしか吹っ切れたような笑顔を浮かべていた。

 昨秋ドラフトで田中を担当した下敷領スカウトが、以前にこんな話をしていた。昨年6月、京大4年の田中は、大学日本代表選考合宿に参加した。早大・有原(現日本ハム)や亜大・山崎(現DeNA)ら並み居る“野球エリート”の中に混じり、“たたき上げ”の田中は、初めて全国の舞台に立った。同スカウトは「ドラフト候補が一堂に会する場所で、普通は尻込みをしてしまいがち。でも田中は違った。それどころか、臆することなく相手に立ち向かい、堂々と腕を振って投げていた。彼を獲得したいと強く思ったのは、この姿がとても印象的だったからです」と述懐していた。強い腕の振り、投げっぷりの良さ、そしてハートの強じんさ。これこそが、本来の田中の姿ではないか。

 ほろ苦かったデビュー戦を「いつか笑って話せるときが来ればいい」と話していた田中。苦悩した期間も、故障も決して無駄にはしない。本来の田中のスタイルを貫き、後半戦で再び1軍のマウンドに立つ-。今回のフレッシュ球宴を、そのための第一歩とする。(デイリースポーツ・福岡香奈)

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