中京・松井、通算1047球“怪物”V

 「全国高校軟式野球・決勝、中京2‐0三浦学苑」(8月31日、明石トーカロ)

 日本野球史を塗り替える死闘の果てに待っていたのは歓喜の輪と深紅の大優勝旗だった。決勝では中京(東海・岐阜)が2‐0で三浦学苑(南関東・神奈川)を下し、2年ぶり7度目の優勝を達成した。中京はこの日のダブルヘッダーで延長四十六回から再開された崇徳(西中国・広島)との準決勝で延長五十回表に勝ち越し、3‐0で決勝に勝ち上がった。中京の松井大河投手(3年)は50回を完封、決勝でも四回途中からリリーフに立ち、大会を通じ1047球を投げた。

 体はとっくに限界を超えていた。それでもありったけの力を振り絞って投げた松井の今大会通算1047球目「本当に気力を出して、残っている力を全部使って気持ちで投げた」というスライダーに三浦学苑・佐久間のバットが空を切る。最後は八回から6者連続三振というど派手な形で優勝に花を添え、松井は7日分の思いを吐き出すかのように天に向かって全身で雄たけびを上げた。

 「今は日本一を勝ち取ったうれしさで疲れもない」。重圧、疲労から解き放たれ、最高の笑顔を見せた。

 実に4日間をかけ、通算50回を投げ抜いた準決勝から2時間28分後に行われた決勝戦。四回表1死二、三塁のピンチで、大歓声に迎えられリリーフのマウンドに立った。「行ける準備はしていたし、あれだけきつい試合が終わってからも集中力は切らすことなく臨めた」。女房役の西山が三塁走者をけん制で刺す美技もあってピンチをしのぐと、その後は50回の延長を投げきった直後とは思えない快投だった。

 三塁側の中京スタンドにはともに50回を投げきった崇徳・石岡が応援してくれていた。準決勝終了後には「オレらの分も優勝してくれ」と声をかけられた。「これだけ投げ合えて、お互い譲らず本当にいい経験ができた。いい仲間。応援は心強かった」と松井。誰よりも苦しさを分かり合えたライバルの思いも背負い、力ももらってのマウンドだった。

 もう1つ、常に胸に秘めている思い出があった。軟式を続けるか硬式に進むか迷っていた中学3年のとき。中京の平中亮太監督(33)からある贈り物とともに勧誘された。「君と一緒に全国制覇しよう」とメッセージが記された背番号1のゼッケン。その熱意に突き動かされ、軟式を選んだ。「軟式をやっていてよかった。先生に優勝をプレゼントできてうれしい」。優勝を決めた後は真っ先に監督の胸に飛び込み、男泣きで体を震わせた。

 日本最長となる延長戦を「記録を作りたくて作ったわけではないけど、歴史に残る試合ができて光栄だった」と振り返った。準決勝の4日間、10時間18分、初戦の三回に1失点して以来、72回2/3連続無失点。熱き恩師、かけがえのないライバル、そして深紅の大優勝旗。すべてが松井の勲章となって球史に刻まれた。

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