星稜・越中、痛む胸に思い出を宿し…
「全国高校野球・3回戦、八戸学院光星5-1星稜」(20日、甲子園)
胸の痛みをこらえながらも、星稜・越中星内野手(3年)はピンチのたびに、精いっぱいの大声をベンチから張り上げた。「大きい声を出すと違和感がありました。無理してました」。チームは延長戦の末に敗戦。涙で目を真っ赤に腫らした。
昨年8月、練習中に突然「バットも振れなかった」という強烈な痛みを胸部に感じた。診断の結果は、胸部中央を通る縦隔に空気がたまる縦隔気腫。1週間の入院後に一度退院したが、悪化。1カ月の再入院を余儀なくされた。それでも、2度目の退院後は順調。再発の恐怖と戦いながらも、今春に念願のベンチ入りを果たし、背番号16を手にした。
だが、病魔は最悪のタイミングで再来した。12日の1回戦・静岡戦の試合前練習中に胸が痛んだ。診断結果は異常なしだったが、安静が絶対のため、以後の練習は見学。試合への出場は絶望的になった。「何で甲子園でという気持ちでした」。石川大会は1試合に出場。聖地でのプレーを夢見ていただけに、悔しさを募らせた。
それでも、残酷な運命にみまわれた球児は、最後に笑ってみせた。「試合に出たい気持ちはありましたけど、甲子園のグラウンドに立てただけで十分でした」。病気に負けず、必死でたどり着いた甲子園。まだ痛む胸にかけがえのない思い出を宿した。