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秋山あっぱれ初星!虎救った“再奪首”

 5回、飯原を中飛に打ち取り、打球を指さす秋山(撮影・高部洋祐)
 5回、飯原を中飛に打ち取り、打球を指さす秋山(撮影・高部洋祐)

 「ヤクルト2-9阪神」(28日、神宮)

 阪神のドラフト4位ルーキー・秋山拓巳投手(19)=西条高=がヤクルト戦(神宮)でプロ2度目の先発。5回を1失点に抑え、うれしい初勝利を挙げた。阪神の高卒新人の勝利は86年の遠山(現阪神育成コーチ)以来、24年ぶりの快挙。先発投手として8試合ぶりの勝利で、首位を奪い返した。

  ◇  ◇

 こらえていたはずの涙が、グッと込み上げてきた。「話すことは考えていた」という初のヒーローインタビュー。泣かないと決めていた。それでも勝利の瞬間、目の前がかすんで見えなかった。8月28日。秋山が神宮の杜にプロ1勝を刻んだ。

 「初めての勝利なので、すごくうれしいです」

 神宮のボールが指に合わず、制球に苦しんだ。初回、先頭の青木に四球を与える。ここは後続を断ったが、二回は畠山の二塁打から宮本の左前打で1点を失った。

 だがここで崩れない。2死満塁で田中浩を右飛に取ると、三回2死満塁も、川端を三ゴロに仕留めた。四、五回は安打を許さず、勝利投手の権利を持って降板。プロ初登板で巨人戦のマウンドに立った経験と自信が、指先に力を加えた。

 幼少期から何度も黒土に落とした涙が、秋山の心を強くした。松坂(レッドソックス)にあこがれ、小学1年生で始めた野球。12年後の10月29日、ドラフトで阪神に指名を受けた。その会見で見せたのは大粒の涙。「1位だと思っていた」と発言したことから『悔し涙』と報じられたが、真相は少しだけ違った。

 「悔しい気持ちもありました。でも正直、ホッとしたというのが一番だったんですよ。少し恩返しができたかなって」

 野球経験のない父・正二さんは息子の夢に付き合うため、指導法を猛勉強した。投球に役立つ柔軟体操から、野球技術は経験者に聞いて回った。父と2人、毎晩奏でた空き地でのノック音が、いまでも脳裏で優しく響く。秋山の原点だった。

 母みゆきさんは料理で丁寧に油を抜き、太りやすい体質の息子を気遣い続けた。二人三脚…いや“三人四脚”の夢が結実したことで、あふれ出す感謝の気持ちが涙となって流れた。

 「きのう、母の誕生日だったんで。五回を投げきるときに思い出したので、『よし、頑張ろう!』と思いました」。4月3日。2軍デビュー戦は正二さんの誕生日だった。「勝ったらウイニングボールをあげるからね」。5回1失点もリードを許しての降板だった。果たせなかった父との約束。感謝の気持ちを込めた90球で、母に1日遅れの誕生日プレゼントだ。

 5回5安打1失点。直球の最速は146キロ。高卒新人の勝利は86年の遠山以来、24年ぶり4人目の快挙だった。「もっとチームの勝利に貢献したい。ルーキーという気持ちは全くないです」。先発投手崩壊の流れを、8試合ぶりに止めた救世主。右手にはチームを首位に押し上げたウイニングボール。その目に涙は、もうなかった。

(2010年8月28日)

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